Wednesday, February 21, 2007

放送法改正案:番組ねつ造、再発防止策を強制

関西テレビの「発掘!あるある大事典2」の番組ねつ造問題を受けて、総務省が検討している放送法改正案の概要が20日、明らかになった。「報道は事実をまげないですること」に違反した放送局に、総務相が再発防止計画の提出を求める規定を新設することが柱になる。計画提出を求める場合には、総務相が電波監理審議会に諮問する手続きを設けて恣意(しい)的な行政処分に歯止めをかける方向だ。だが、総務相が「事実」かどうかを基に放送内容に踏み込んで行政処分する規定を新設することは、憲法が保障する表現の自由に抵触する恐れもあり、論議を呼びそうだ。

総務省が検討している放送法改正案では、これまで行政指導で任意で求めてきた不祥事の事実関係調査や、再発防止策について提出を強制するものとなる。対象は「事実でないことを事実であるかのように放送し、国民の生活や権利に悪影響を及ぼすおそれがある」場合に限定することで、ねつ造の再発を防ぐ考えだ。

放送局が法令に反した場合、総務省はこれまで「警告」などの行政指導をしてきた。電波法に基づいて、一定期間の電波停止や放送免許を取り消す厳しい行政処分を行うことも可能だが、放送局の経営に影響が大きいことなどを理由に前例がない。このため、菅義偉総務相は、中間的な行政処分を導入する必要性を強調していた。【小島昇、臺宏士】

◇解説…「報道の自由」制約の懸念

放送局に対する新たな行政処分として総務省が固めた放送法改正案は、報道や番組内容が事実でないと総務相が判断した場合、再発防止計画の提出を求めるものだ。公権力が放送の内容に関与し「報道の自由」を制約する懸念が強い。

同計画の提出を求めるには報道(番組)が事実かどうかを認定する必要がある。だが、関西テレビの情報番組のように客観的にねつ造が確認できる例ばかりではない。例えば、旧日本軍の従軍慰安婦を取り上げたNHK特集番組の改変問題では、当時官房副長官だった安倍晋三首相ら政治家による「圧力」問題を報じた朝日新聞と、圧力を否定した政治家で見解が分かれた。このケースで報じたのがテレビ局であれば、総務相が直ちに「事実を曲げた」などと断定しかねない。

また、再発防止計画では、報道の根拠となった情報源とのやりとりなどの検証が求められる可能性がある。それは取材源の秘匿という報道倫理の根幹に抵触する。

改正案は電波監理審議会を介在させることで客観性を担保する考えだが、NHK命令放送問題で電監審は菅義偉総務相の諮問を追認。公権力乱用の歯止めとしての機能に疑問符が付いた。改正案は、憲法が保障する報道の自由を軽視するものと言わざるを得ない。【臺宏士】
毎日新聞 2007年2月21日 3時00分

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