NHK受信料の支払いを義務化する放送法改正案が、今国会に提出される。成立すれば不払い世帯、未契約世帯への支払い請求が強化される見通しだ。だが、不払い世帯が増えたのは、NHK内部で不祥事が相次いだため。総務省は支払い義務化の前提として、受信料の二割前後の減額をNHKに求めているが、この改革案、国民の納得を得られるだろうか。 (吉田瑠里)
現行の放送法では、NHK受信料について「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信について契約しなければならない」と規定されている。テレビ、放送受信機能のあるパソコン、カーナビ、携帯電話などが家に一台でもあれば、対象となる。ほぼ全世帯といえるが、契約していても受信料を払っていない家庭(不払い世帯)が百万世帯弱、ほかに未契約の家庭も約一千万世帯に達している。
受信料の支払いについては契約の内容を定めたNHKの規約に規定されているだけで、今回の放送法改正案は「契約の義務」に加えて「支払いの義務」を明文化するものだ。
これに対しNPO法人「株主オンブズマン」(大阪)の阪口徳雄弁護士は疑問を呈する。「たとえば税金や下水道料金に支払い義務があるのは当然だが、税金を課す国や地方自治体の首長は選挙で選ばれる。下水道料金は市民が選んだ議員たちが議会で条例を決める。でも、受信料は、NHKが金額を決め、総務大臣が認可する。私たちが選ぶことができないNHK執行部が決めた使用料を支払え、と強制できるのか」
阪口弁護士自身は、受信料を支払っているが、これまで「不払い」を通じて意見を表明できた視聴者の行動が封じられることも危惧(きぐ)する。
「視聴者が不満を表明する手段を奪われれば、ますます政府・与党寄りの放送になってしまう」受信料を二年間払っていない東京都内の女性(27)も「支払いが義務化されたら、不祥事に対して絶対に許せないし、番組の内容にも今以上に不満が高まると思う。まず顧客の意見が反映される仕組みをつくるのが先ではないか」と話す。
◇ ◇
NHK受信料の不払いが増えたのは、二〇〇四年夏の元チーフプロデューサーによる制作費着服事件がきっかけ。その後も内部の不祥事が相次ぎ、二〇〇五年十月から十一月のピーク時には、不払い世帯は百二十八万軒に達した。昨年十月、NHKは不払い者四十七人と一事業所に対し、支払わなければ法的処置を取ることを明記した文書を送付。その波及効果で不払い世帯は減少している。
支払いが義務化されれば、割増金などの強化策が予想される。未契約世帯に対しても「契約の有無に限らず、支払い義務を明確化する」(NHK)という姿勢だ。
Tuesday, February 13, 2007
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