Tuesday, March 20, 2007

受信料の値下げ問題, NHK粘り腰で“休戦”

NHKが、受信料値下げを求める政治の側からの圧力に徹底抗戦している。今国会に提出予定の放送法改正案をめぐって大詰めの議論が行われた二十日の自民党通信・放送産業高度化小委員会で、NHKの橋本元一会長は現時点で値下げに応じられないとの意向を重ねて表明し、一応の理解を得た。NHKは今秋、新たな料金体系を発表する方針。あくまで自主的に値下げを行う構えだが、その努力が不十分であれば、政治圧力が再び強まる可能性もある。(小田克也、安食美智子)

「(総務省が試算した)受信料の二割値下げは容易ではない。時間を頂きたい」。橋本会長は同委員会の席上、こう発言。議員側からの値下げ要求を突っぱねた。これに先立ち橋本会長は十三日、同委員会の委員長を務める片山虎之助参院幹事長と国会内で会談。その際も片山氏から、受信料の支払い義務化で徴収率がアップすれば、どれだけ値下げできるか具体的に示すよう求められたが、難色を示している。

NHKは九月に、値下げを念頭に新たな受信料体系を発表する方針。一連の不祥事の影響で激減した受信料収入は回復基調だが、不祥事以前の状況には戻っていない。このため値下げすることで契約者数を増やし、全体として増収につなげる戦略だ。ただ、そのための財政収支の試算は徹底して行わなければならず、「今の段階で値下げ幅など、具体的なことは言えない」(関係者)とする。NHK幹部は、「自民党としては、統一地方選や参院選で、値下げを実現したとアピールしたいから、橋本会長に値下げすると言わせたいのだろうが、その手には乗らない」と予防線を張る。

値下げをめぐってはNHKが、政治家の微妙な力関係に配慮している感がある。これまでに菅義偉総務相の値下げ要求を断った経緯があり、片山氏の求めに応じて値下げすれば、今度は総務相のメンツをつぶしかねない。そんな心配から、現時点では値下げ拒否の姿勢を貫いたとみられる。「NHKにとって、元総務相の片山氏は大切な人。しかし当選四回で総務相に抜てきされた菅氏の影響力も無視できない」(関係者)と、両氏の立場に気を使っている。

二十日の自民党通信・放送産業高度化小委員会では、NHKが値下げに応じなかったこともあり、同局の悲願である受信料の支払い義務化も放送法改正案に盛り込まれない方向となった。橋本会長は委員会後、記者団に「値下げが条件なら、義務化の断念は、やむを得ない」と語気を強めた。これで、受信料をめぐる政府・与党とNHKの綱引きは、一時“休戦”となったもよう。ただ、NHKが九月に示す予定の料金体系で、値下げ内容が不十分であれば、政治の側が大幅値下げを再び求めてくる可能性がある。片山委員長は同委員会の最後に、値下げ問題に触れて「これだけまとまらなければ、(今回の放送法改正)案から除き、九月にNHKから案が出たら議論したらどうか」と提案。再度、徹底的に話し合うことをにおわせている。

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