いわゆる従軍慰安婦問題の核心は、官憲による「強制連行」があったかどうかだ。
米下院外交委員会で慰安婦問題に関する対日決議案が審議されている。日本の軍隊が若い女性を「強制的に性的奴隷化した」歴史的な責任を明確に認め、日本の首相は謝罪すべきだ、という内容だ。
日本軍が組織的に「慰安婦狩り」をしたかのように決めつけている。だが、日本政府の調査でも、これを裏付ける文書はない。歴史家の間でもこうした事実はなかった、というのが「定説」だ。この決議案を提出した議員らは、これらを覆すだけの確かな資料があるのか。
安倍首相は国会で、決議案は「客観的事実に基づいていない」と語った。麻生外相も、同様の見解を示して「甚だ遺憾だ」と述べた。曲解に満ちた決議案である以上、政府は事実を正確に説明して、採択を阻止しなければならない。
首相は、慰安婦の募集について、「狭義の意味の強制性を裏付ける証言はない」と強調した。「官憲が家に押し入り、人さらいのごとく連れて行く、『慰安婦狩り』のような強制的なもの」、つまり、官憲による強制連行はなかったということを明確にした。
その一方で首相は、民間業者による、本人の意に反した「広義の強制性」があったことを認めた。だが、こうしたケースと、軍による強制連行とは、まったく違うものだ。
「強制性」を拡大解釈し、核心をそらして非をならす一部のマスコミや国会議員らは、今後も内外に誤った認識を広げるだけだ。
それにしても、この問題は、なぜ、何度も蒸し返されるのか。その最大の理由は、1993年、当時の河野洋平官房長官が発表した談話にある。それには、慰安婦の募集に「官憲等が直接これに加担した」などと、日本軍が強制連行したかのような記述がある。だが、これが裏付けのないまま書かれたことは、元官房副長官らの証言ではっきりしている。
自民党の有志議員らは、談話のあいまいな表現が、誤解を生む原因になっているとして見直しを検討中だ。米下院の決議案は、「談話の内容を薄めたり、撤回したりする」ものとして、こうした動きをけん制している。しかし、不正確な談話を見直すのは当然のことだろう。
河野談話を発表した背景には、韓国側の圧力を前に「強制連行」さえ認めれば問題を決着できるとみた甘さがあった。政府は米下院決議をめぐり、再び、外交上の失策を繰り返してはならない。(2007年3月7日2時0分 読売新聞)
Tuesday, March 06, 2007
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