Monday, October 22, 2007

nhk_complience

NHK番組改変問題、「会長了承していた」と告発者会見(朝日新聞)
http://www.asahi.com/national/update/0113/014.html

NHK番組の放送前に、自民党の有力政治家がNHK幹部と面談し、番組内容がその後、大幅に改変された問題で、内部告発をしていたNHKの幹部職員が13日午前、東京都内のホテルで記者会見した。内部告発者が実名を明かして会見するのはきわめて異例。この幹部は「放送現場への政治介入を許した海老沢勝二会長らの責任は重大」と訴えた。

会見をしたのは、番組制作局教育番組センターのチーフ・プロデューサー長井暁さん(42)。問題の番組は、旧日本軍慰安婦問題の責任者を裁く市民団体開催の民衆法廷を取り上げたもの。01年1月30日に放送され、長井さんは同番組の担当デスクだった。

長井さんによると、番組を企画した下請け会社の視点が主催団体に近かったことから、「戦争を裁くことの難しさ」への認識や歴史的な位置づけ、客観性を強調して現場を取りまとめてきたという。事前に右翼団体などから「放送中止」の要請はあったが、放送2日前の夜には通常の編集作業を終え、番組はほぼ完成していた。

しかし、放送前日、NHK幹部が中川昭一経産相と安倍晋三・自民党幹事長代理に面談。その後、幹部から番組内容を改変するよう指示されたという。「これまでの現場の議論とはまったく違う指示。現場の意向を無視していた。政治家の圧力を背景にしたものだったことは間違いない」と長井さんは述べた。

また、「この数日前にもNHKの国会担当役員らが中川氏らに呼び出されて、ガンガンやられた」とも話した。さらに長井さんは「海老沢会長はすべて了承していた。国会議員に会ったことなど具体的な中身は逐一、書面で報告されていた」と説明した。その上で、「制作現場への政治介入を許してしまった海老沢会長や役員、幹部の責任は重大です」と訴えた。

長井さんは、NHKの「コンプライアンス(法令順守)通報制度」に基づき、昨年12月9日に内部告発した。だが「通報から1カ月以上たった今日にいたっても、聞き取り調査さえなされていない」と話した。

長井さんは87年に入局。ディレクター時代はNHKスペシャル「朝鮮戦争」「張学良がいま語る」「毛沢東とその時代」などの企画・制作を担当。デスクになってからはNHKスペシャルの大型シリーズ「街道をゆく」「日本人はるかな旅」「文明の道」などを手がけてきた。

中川経産相と安倍幹事長代理は「偏った内容だ。公正な番組にするように」などと指摘したことは認めているが、安倍氏は「NHK側を呼びつけた事実はない。番組の中止などは求めていない」としている。

〈NHKのコンプライアンス(法令順守)通報制度〉 放送法などの法令やNHK倫理・行動憲章などの内部規範に違反または違反しそうな事実があるとき、職員らが通報できるようNHKが04年9月から整備した内部告発制度。一連の不祥事を受けて整備された。通報窓口は外部の法律事務所に置かれている。通報があるとNHKの専門部署がその内容を調査し、必要な場合には不正行為の停止を命じることができる。職員は調査に協力する義務を負い、通報者に不利益な取り扱いは行わないとの規定がある。(01/13 11:47)

nadai desk

NHK番組政治家介入疑惑:長井記者会見

司会(0:00):本来ですとNHKなりの記者クラブでするのが一般的なんですけれども、長井さんの方からNHK内というのは今回の問題の性質上好ましくないといった趣旨の申し入れがありまして、大変異例なんですけれどこちらの会場を記者クラブの幹事としてとることにしました。

NHK番組制作局長井暁チーフ・プロデューサー(0:27):まず先ほど説明がありましたように、NHKでやれば簡単なんですけれども外部でお願いしますということで、このような会場をご準備いただいたラジオ・テレビの皆さんにまずお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

御存知の通り、昨日の朝刊で朝日新聞のほうに記事が出てしまいましたので、取材が殺到しているということもありますので、記者会見を開いてですね詳しく正確を期すためにも記者会見を開いたほうがいいとの判断になりまして、急遽、今日開いていただいたという次第です。

それでお手元に資料が行っているかと思いますれども(と記者席を見る)、ETVの改変事項についてもあらましは資料の方をご覧頂ければ、これはあくまでも私が見聞きしたことでありますので、これですべて100%正しいかどうかということは、みなさまがたにいろいろとウラ*2をとっていただいた上で記事にしていただければというふうに思うんでありますが、一応、私が知り得たことをなるべく正確に記したつもりであります。

(1: 44)まず事件のあらましについてでありますが、実際、その放送は、2001年の1月30日でございました。その29日前日から、いろいろと政治的な圧力を背景にした作り直しというものが行われたわけですが、実は以前にでもですね、この番組はその性質上非常に難しい番組であるということで、いろいろと編集には苦労しておりました。ただそれまでのいろんな議論、編集の作り直しというのはあくまでも番組論での議論であり、まあ取材相手との距離が近すぎるのではないかとか、歴史的経緯をきちんとふまえた方がいいとかですね、世界的な潮流の中で位置付けた方がいいというような、まうそういう趣旨で番組を作っておりました。

(2:30)で、29日、ご案内の通り、松尾放送総局長と国会対策をしております野島担当局長、現在の(NHKの)理事ですけれども、この二人が中川・安倍氏のところに説明に出向きまして、そこから戻ってきた夕方ですね、私も立ち会ったかたちでですね、番組制作局長室で異例の試写を行いました。

(2:56)で、この段階というのはですね、「オフライン編集」というのをアップした段階のテープでありまして、それじゃこういうものを番組制作局長や、ましてや総局長、総合企画室の担当局長が見るということはまずありえないことだったわけです。ですから、非常に異例な事態だったということははっきり言えるというふうに思います。

(3:16)それで実際この日ですね、松尾さんと野島さんが永田町からお戻りになってですね、それで試写を始め、その後いろいろ議論があってですね、番組の大幅な造り替えがなされたわけです。で、44分だった番組は異例の43分といった形で放送されることになりました。

(3:42)つまり、それまでの番組の議論とは、番組論との議論とはまったく異なる造り替えを命じられたということでありまして、これは中川・安倍両氏の意向を反映する形、彼らの了解を得るための造り替えであったことは間違いのない明白の事実であろうというふうに思っております。

(4: 01)さらにNHKの方(上層部)はこのことについて、「NHK独自の判断で編集した」というふうにずっと一貫して申しておりますけれども、たとえば翌日にもまた「あと3分のカット」ということを命じられました。これは松尾放送総局長から制作現場に直接出たわけですが、これについては現場の責任者である教養番組部長も、担当のチーフ・プロデューサーも、デスクであった私も全員反対致しまして、なんとか3分のカットということを思いとどまってほしいということで松尾放送総局長に何度も働きかけをいたしましたが、これはまったく現場の意向を無視する形で、三分のカットは業務命令として命じられたと言うことは事実であります。ですから、NHKの上層部が言っている「NHK独自の判断で編集した」ということはですね、まったく現場を無視した放送総局長や番組制作局長がどのようにからんでいたかはわかりませんけれども、そういう判断であったと。それはあくまでも政治的な勢力を背景としたものだったといわざるを得ないというふうに思います。

(5:11)以上が事件の経緯でありまして、詳しくは書面の方でご確認頂きたいと思います。で、このことについてですが、海老沢会長はすべて了解していたと私は考えております。

(5:28)私の信頼すべき上司の発言によりますと、野島担当局長はですね、この事態の経緯を逐一海老沢会長に報告致しておりましたし、当然、海老沢会長の指示や了承を得てこの作業が行われたというふうに考えております。

(5:48)それで、実際に総合企画室と番組制作局がそれぞれ会長宛に報告した報告書が存在しております。これは私は手に入れて目にしておりませんけれども、存在していることは確かなようです。

(6: 07)このことについて四年間私も非常に悩んでおりましたけれども、一連の不祥事を経て、去年の九月にコンプライアンス推進室というものがNHKの中に設置され、コンプライアンス通報制度というもの内部通報の制度ができました。そこで私としてはNHKの自浄能力というものに期待をしてですね、去年 (2004年)の12月9日に内部通報を行いました。

(6:43)この事件を調査し、その事実を明らかにしてほしいという旨のお願いをしたわけです。で、結果的にはそれが一ヶ月経ったのですけれども、まだ関係者へのヒアリングすら始められていないという事実を私が知るに到りまして、もうこれは皆様、マスコミの方に事実を語るしかし方がないのではないかなということになりました。

(7:09)朝日新聞の方に先に出てしまいましたが、朝日の記者の方が12月の下旬に接触がございまして、私としてはとにかくコンプライアンス通報制度の結果を待ちたいのでしばらく記事にしないでくださいということをお願いしていたのですけれども、一ヶ月経ってもなんの成果も挙げられないということを知るにいたり、記事にされることを私は了承致しました。

(7:32)現実問題として、コンプライアンス通報制度はですね、末端の職員の不正については直ちに調査し、直ちに発表しております。それはご存知の通り、音響効果部の職員が自分で作曲した音楽を外部フロダクションに委託したかのように見せかけて不正にキックバックを受けていたということはご存知かと思いますが、これは内部通報制度によってですね、明らかになった事件なんです。

(8:11)つまり、末端の職員の不正は発見し次第すぐ調査し、公にするにも関らず、NHKの会長やその側近が関った出来事に関しては調査する能力も意思もないということが明白だと思います。つまり、今の海老沢体制のもとではNHKの本当の改革というのはやっぱり難しいんだなというのが、私の今回の経験で感じた点でございます。

(8:42)今回私が経験したことというのは、非常に露骨な形で政治介入がなされたという、稀有なケースかと思いますけれど、実際、海老沢体制になってからはですね、いわゆる放送現場への政治の介入、いろんなレベルのものがございますけれども、放送が中止になったり再放送が中止になったりというようなことは、非常に日常茶飯事に起るようになってしまいました。

(9: 14)私は、ひとつひとつ私の関係ないことについてここで述べる立場にはございませんけれども、私自身から経験したことから言っても政治家から批判や非難が来ると、それが制作現場に直にふってきてしまうというような状況が海老沢会長のもとで行われております。特に、報道の現場ではやはり、もうそういう政府の都合の悪い番組の企画と言うものは出しても通らないんだというような雰囲気と言いますか、そういう萎縮した空気が蔓延しているという印象を私は持っております。

(9:53)ですからそういう意味で、不正経理やいろんなものが注目されておりますけれども、海老沢体制のもっとも大きな問題というのは、そういう政治介入を恒常化させてしまったという点にあるのではないかと思いまして、こういうふうなことをやはり明らかにすべきだと言うふうに思ってこのような記者会見に臨んだわけです。

(10: 21)ご存知の通り、いまNHKは未曾有の危機にございます。こうしている間にも受信料の不払いがどんどん増えているというような状況であります。もう現場の営業スタッフの苦労というのはもう並大抵のものじゃない状況にきております。奇しくも今年は放送開始80周年という年でありまして、このままいくとNHKの受信料制度、公共放送の存立自体が非常に危ういという状況に到っております。

(10:54)なんとかこれは視聴者の信頼を回復し、NHKが出直すということが一日も早く求められているのだと思います。海老沢会長が辞任を示唆したかに言われておりますけれども、改革が軌道に乗る、予算編成が軌道に乗ったところでというようなことをいっておりますけれども、私どもはそういうふうに海老沢会長が一日伸ばせはそれだけ受信料の不払いが増えるわけですから、とにかく一日も早く、海老沢会長がいなくても予算編成はできると思いますから、一日も早く辞任していただきたいというふうに思っております。

(11:35)さらにこれからの問題としては、海老沢会長の側近で固められた経営陣も即座に退陣し、人身を一新して真の改革をおしすめない限り視聴者の方のほんとうの信頼回復はなされないのではないかと私は思っております。

(11:57)海老沢会長も12月の番組*3でも何度も申し上げたとおりですね、業務改革と予算編成が軌道に乗ったら出処進退は自分自身で判断したいと申しておりますけれども、そういう話を聞くと私共の職員の多くはですね、自分の側近が経営に残る目途がたって自分の影響力がある程度保持することが軌道に乗ったらやめるというふうに聞こえてし方がないわけです。

(12:32)そのような意味で私は、会長が辞任を示唆したと言うことで安心するのではなくて、一日も早く会長には辞めていただいて、その取り巻きの方々にもですね、退場していただき、それで新しい体制でNHK改革を一日も早くはじめる必要があるのではないかと、そういうふうに思っております。

以上です、どうもありがとうございました。

司会:では各社、ここから自由に質問するという形にしたいと思います。マイクをまわしますので。

松本(日経新聞)(13:24) 日経新聞の松本と申します。長井さんのお歳をお伺いしたいのですけれども。

長井 42歳です。

松本 この資料にもあるように、冒頭仰っておりましたが、ご自身が見聞きした範囲内でできるだけ正確を期すということだったんですけれども、そもそも安倍・中川両氏からのああいう番組の改変の要求と言うのがどういうかたちだったのかということは、ご自身で確認の取れる範囲でどうなのかということと、それから松本さんがどういう形でそれを伝えられたのか、最終的に番組改変の制作現場への指示と言うのがどういう文言なり書面だったのか、どういう形で指示を受けたのかという三点を教えてください。

長井(14:16) 経緯としては、29日の数日前に、NHKの国会対策の職員が、中川さんたちに呼び出されて相当激しくその番組内容を批判され、放送を止めろということを言われたらしいです。それはおそらくこれは大変なことだということで、野島担当局長が手配して29 日に放送現場の総責任者である松尾放送総局長を中川さんと安倍さんの所に説明にいっしょに行ったという経緯です。そこでも松尾さんはあれこれこういうふうに手直しするので放送させてほしいということを言ったらしいのですれども、まあ明確にお二人から了解は得られなかったと聞いております。で、そこから帰ってきたのが私が立ち会った試写でありまして、そこでは終始野島さんがリードするかたちで造り替えが行われました。その時、その時点では私自身は「ああこれは政治がらみだな」ということはわかっておりましたけれども、申し入れた相手が中川さん安部さんだということは全然知らなかったのですが、それを知ったのは放送の後にある上司から教えられてはじめて判ったわけですが、その時のやりとり等からもう政治的な圧力、その批判をかわすために番組を造り直すのだなあというようなことを私は認識しておりました。その時は一応議論を経てこういうふうにしたらどうかということで43分バージョンというものが作られたわけですが、その翌日というのはもうほんとにスタジオの作業は最終段階の局面になっていまして、もう完成間近というところに電話がかかってきまして、教養番組部長が呼び出されてですね、こことここを三分カットしろというような指示がございました。私はその時は断固反対してですね、組合にもそのことを訴えてなんとか松尾総局長の反意を促せないかということで話をしましたし、担当のチーフ・プロデューサーも私の意見に同意してですね、松尾放送総局長に会いに行きました。でもその時の話は、とにかく全責任は私が取るので指示通り作業を進めてほしいという松尾放送総局長が言ったというふうに聞いております。

本田(朝日新聞) 関連してよろしいでしょうか。朝日新聞の本田と申しますが、ということは安倍・中川両氏はですね、この二人が認めている29日に松尾総局長や野島担当局長と会ったということだけではなくて、その数日前に仰いましたね、数日前に野島さんとかそれから国会担当の役員を呼びつけて相当がんがんやったと。このことについては誰が長井さんに話して確認されているんでしょうか。

長井(17:13) 名前は明かせませんけれども、信頼すべき上司としか申し上げられないのですけれども、その最初に呼び出しのあった日にですね、中川さん安倍さんが全員揃っていたかは私は存じ上げません。とにかく中川さんたちのメンバーだということで、おそらく数人いらっしゃったんだと思います。そこに、役員というか国会対策の総合企画室の職員が出向いてですね、説明をして批判されたということだと思います。

本田 関連して、そこには野島担当局長がおられて他には誰がいたんですか。

長井 他のメンバーはよくわかりませんが、野島さんと中川さんがいたことは確かなようです。

本田 伊東律子局長はいらっしゃいましたか?

長井 そういうふうには聞いていません。

本田 もうひとつだけ関連して、今日配られた書面の中で、NHKのコンプライアンス推進室の方から12月17日に調査することになったという返事があって、そして一ヶ月も経った今日に到っても関係者にヒアリングすら行われていませんとありますが、これは開始されていないことはどのように確認されましたか?

長井 ちょっと説明いたしませんでしたが、このコンプライアンス通報制度と言うのは外に窓口がございまして、東京丸の内法律事務所というところでございますれども、私はこの外の窓口を通じて通報したということですので、この弁護士さんから17日にまず調査することになりましたというご連絡は頂きました。そのあと私が1月6日にもうすぐ一ヶ月経とうとしているけれども調査はどうなっているのですかという催促の書面を出しました。そうしましたら通報窓口になっております弁護士の方からご連絡がございまして、理由はこうでありました。野島さん、松尾さん、伊東さん、番組制作局長ですけれども、この三人にヒアリングを申し込んだけれども、この問題は裁判で争われている最中なので応えられないと言ってヒアリングを拒否されたというふうにですね、そういうような事情があって調査が進んでいませんという連絡を頂きました。

本田 念の為に確認ですけれども、私が入手しておりますNHKのコンプライアンス規定によりますとですね、推進室が調査を開始したらNHKの職員や機関は協力しなければならないという義務があるはずですが、ということはNHKの三人の松尾、伊東律子、それから野島担当局長はこのコンプライアンス規定違反ということが言えるんでしょうか?

長井 その辺は私もよくわかりませんけれども、裁判で争われているということが理由になるとはちょっと思えないです。

竹内(フリー) よろしいでしょうか。どうもフリージャーナリストの竹内*4と申します。こんにちは。二点質問させていただきたいのですが、さっく組合にお話をもっていかれたというところがございましたが、そのところをもう少し詳しくお聞きしたいのと、あと局内の考査室に放送活性化会議というムスタンの不祥事以降設置されてかけこみできるようなものが小さいながらもあったと思うのですけれども、そのことはご存知だったかなというのと、そこにこうなにか無かったのかというところを是非伺いたいと思います。

長井(21: 08) ご存知の通りNHKは管理職になりますと組合員ではなくなるという制度になっておりますので私は現在組合員ではございません。ただこの事件が起った当時はデスクということでまだ組合員でございましたので、組合にはこの問題に関して、内部通報するということに関して11月からご相談を申しあげて、とにかく私が一番恐れましたのはこれだけ不祥事がたくさん出ていて、このことが出ることによってさらにNHKに不祥事がプラスされたというふうに視聴者の皆様に思われ受信料不払いが増えることを非常に危惧しました。ただ組合は、ご存知の通り会長と経営陣の退陣を要求しておりますし、その時の組合員の意見としては、この際、膿はすべて出しきってやり直すんだということで、そういう励ましのお言葉を頂きましたので通報にふみきったというような次第です。ですから組合とはそういう形で連絡がございます。

それから考査室云々の話は、私はよく存じ上げませんが、おそらくムスタンの時に作られたのでしょうが、まったく機能していないと思います。

竹内 事件直後ですね、なにかアクションをおこしたいと、つまり三年前ですよね…

長井 四年前です。

竹内 それはどうでしょう? 

長井 まあ本来は…あの時に徹底的に反対すべきだったという反省を今は思っております。ただ、これはほんとに言い訳になってしまいますけれども、非常に右翼からの攻撃がNHKのまわりにあり、非常な喧騒した状況の中で作業が進められ、まあほんとに突貫工事で何日も徹夜が続いているというような作業が続いておりました。ですからまずひとつは正常な判断能力がはたしてあったのかどうなのかということにちょっと疑問がございますし、あと私自身が最後まで戦えなかった理由は、私はいいのですけれども、現場に投入されたディレクター三名がございました。ですから、私が死守すれば彼らはそこで作業を止めて最後の三分は切らないというふうに作業の態度をとったと思いますが、そうすると彼らも全員処分の対象となるということがまず一点です。それと、私自身がその前の日の29日の造り替えを受け入れた理由についてですが、ちょっと前後しますけれど、申し上げますと、こういうふうになってもやっぱり元慰安婦の方々の証言というものがその時にはまだ手がついていませんでしたので、これがやっぱり放送されて一般の視聴者の皆さん、国民の皆さんに伝わるということは一定の意味があるだろうということは、私はその時は受けとめたんです。ただ、それは現実的には非常に甘い判断でして、翌日、手をつけられたのは主に元慰安婦の方々の証言部分がカットされたということなので、つまり29日の時点の造り替えを受けてしまったことが、結果として30日も踏みとどまれなかった原因だろうと私は思います。(目を閉じて俯く)

竹内 いまの話に関連してですけれども、もしその当時、長井さんはデスクで、上にチーフ・プロデューサーがいらっしゃって、現場全員が3分のカットに反対したのだったら、今日記者会見されているように反対して、そして業務命令違反で処分が下る前に全員で一致団結して記者会見をして、この上からの圧力や政治的介入を明らかにするという、そういう現場での解決の方法というのは、やっぱり思いつかなかったのでしょうか?

長井 …… ひとつはその時に私は実はスタジオから、私のよく知っている放送系列の委員長に電話をしまして、なんとかならないかということで話をしました。しかしそれはいまからすると私は非常に後悔しているのですけれども、そういう事態、実際には29日からですけれども、そういう事態になっているということを私は組合に伝えていなかったので、突然、放送の数時間前という段階で報告をしたんですれども、組合のほうはあまりにも急なことなのですぐに動けないというニュアンスでございました。組合がもし動くということになっていればまあもうちょっと事態は変っていたかもしれないですが、おそらくそれについては日報労の方にも反省があって、そういうこともあって今回は非常に私の内部通報に対して非常に協力してくださっているのではないかなというふうに理解しております。

本田 法の専門家の立場から近藤先生にお伺いしたいのですが、私の先ほどの質問で、コンプライアンス通報制度規定にあります職員とか機関は調査協力義務があると書いてあるのですけれども、ヒアリングを拒否した野島、それから松尾、それから伊東律子というこの三人の方々はこの規定違反になるんでしょうか?

近藤弁護士 対象は「職員等」ですね。定義が三条にあるようなので、厳密に言うと「現在のNHK職員」の方というのはやはりこれに該当します。現在のNHKでない方もいらっしゃるようなので、その点は若干これに該当するかという問題があるかと思いますが、職員等に該当するということになれば、これは内部規定でございますけれども、この規定の義務違反になるだろうということになります。もちろん正当な理由があればということはあるんですけれども、まあ裁判が正当な理由になるのかという、そういう問題になるかとは思います。ただまあ基本的には内部規定の義務違反ということにはなるんだろうとは思いますね、まったくの拒否をするということであれば。

本田 もう一点、長井さんの御見解をお伺いしたいのですが、一連の報道に対して安倍さんと中川さんと若干対応が異なっていてですね、安倍さんの方は自分は決して呼びつけたのではなく、NHK側が来て説明したんだと言っていますが、そういうことはあり得るのかということと、日常的にそういう政治の介入をゆるすということがですね、NHKの幹部の方が、しょっちゅう自民党に呼ばれたか説明に行くかは別にして、行く体質というのはいったいどういう中から生まれてきたんでしょうか。

長井 まず29日について、呼ばれたかどうかということについていえば、松尾放送総局長は呼ばれたと認識しているようです。全体になりますので、そもそも野島担当局長が手配するに到ったその前段の部分がもっと詳しくわからないとですね、その辺のところは明解にならないと思います。…もうひとつは?

本田 そういう体質の…

長井 ええ、それはもう、まったく違うことを申しあげるのはどうかと思いますが、海老沢会長自身は、政治的な、具体的には経世会の力をバックにして会長まで上り詰めた方なので、一見、政治家に対しては強いんじゃないかと思うきらいはあるんですね。現実には、政治部記者の方々が国会対策、政治家対策をされているわけですが、逆に、海老沢さんは政治家の方々にものすごく気をつかう方ですけれども、逆にそのことがつけいれられる。何か言えば説明に来るし、何か言えば影響力を行使できるというふうなことを議員の中に広めてしまったというということがあるんじゃないかと思います。

本田 すいません、これは長井さんでも近藤さんでもどちらでも結構ですけれど、コンプライアンス通報制度の窓口が丸の内法律事務所ですか。この法律事務所というのはNHKの顧問弁護士さんがいらっしゃる弁護士事務所だと思うんですけれど、こういうところに、これがまさにいま裁判をやっている時にですね、バウネットがNHKを訴えている裁判でNHK側に立っているわけですよね。そうすると、先ほど長井さんが仰ったこの制度自体が、外部窓口とはいえですね、NHKの顧問弁護士がやっていると。これは独立性が確保できないというか、最初からここは期待できないんじゃないでしょうか?

近藤 仕組みとしては、窓口にすぎないんですね、法律事務所は。法律事務所は窓口で、実際にやるのはコンプライアンス推進室でやるわけですから、少なくとも意味としては内部でそういうことをやるよりも、少なくともそういう申立があったということははっきりすると。そこがまあある意味では弁護士の義務と申しますか、そういうことになりますから、実際問題として本件は、くれぐれも申し上げますけれど、長井さんのこの問題は裁判とは一切関係無い。効果の問題は別として関係無い。長井さんとしてはこういう問題をしたいということでやっていますので。その場合、たしかに裁判で代理もやっているということになりますから、外部窓口の法律事務所としては非常に難しい立場にたつということはあるんだろうと思います。ただ、職務としてそういう申し出を受けてきちっとそれを調査しなさいと、そこまでの点で意味が無いということは無いと思います。あとは内部のコンプライアンス室、そこがどういう調査をするのかというところがやはり問題になるんだろうと思います。

###(21: 51) ###です。今回こういう政治的な圧力があったと。今後これを改善していく上で、たとえば海老沢会長以下、役員陣がかわれば、人の面で変ればかなり変わっていくのか、あるいはもう国会に予算がおさえられてしまっている部分があるので、なにかシステム自体を変えて行く必要があるのか、ここら辺は現場の方はどうお考えなんでしょうか?

長井 番組制作局の人間がこういうことをお話することかどうかはあれなんですけれども、ひとつジャーナリズム論として国家権力・政治権力とジャーナリストとの距離という問題がここにあると思います。欧米ではジャーナリストを志す人であればまずイロハとしてそういうことを、つまり国家権力に肉迫しなければならないけれども一体化してはいけない、癒着してはいけないということは当然まず学ぶわけです。NHKの政治部記者だけなのかどうかというのは私はよくん存じませんけれども、どうもそういうジャーナリズム論、倫理というふうなものがまだ日本では確立されていないんじゃないかなというふうなきがいたします。

(33:11)NHKの政治記者の方の中にも立派な方がたくさんいらっしゃるのではないかと思うんですけれども、かえってそういう方は偉くならずに、何のてらいも贖罪意識も感じないような人、それで政治家と一体化できるような方がまず偉くなっているということは言えると思います。それは島会長にしても海老沢さんにしてもそうですし、いま海老沢さんの取り巻きの政治記者出身者のひともみんなそうだと思んですね。NHKは行動倫理憲章というものを作ったんですけれども、ほんとうはそういう中に、たとえば政治権力と関係を持つ業務をしている方々にはどういう姿勢で望むべきなのか、どういう行為が不正行為に当たるのか。たとえば自民党のある派閥のために行動したり、ある政治家の委託を受けてなにか放送内容に影響を及ぼすと言ったことがあった場合は、それは明らかな不正行為であるということを規定して、それを守るというようなことが必要だと思うんですが、いままでそれはNHKのなかで実際は無かったんだと思うんですね。

ひとつはそういうことですし、やはり政治と癒着する可能性のある人たちが少なくとも経営に携わるというようなことをなんらかの形で制御するようなシステムっていうのが、なんらかの形で必要なのではないかというふうに、私の個人的な見解ですがそう思っております。

松本(34:51) ちょっと追加で細かいことですが、先ほどご年齢をお伺いしたのですけれども、念の為、生年月日をこの場でお聞かせいただいてよろしいでしょうか。

長井 1962年の8月■日です。*1

伊田(週間金曜日)(35:18) 週間金曜日の伊田*2と申します。安倍さんとか中川さんが、反論というかコメントを出しているのですが、それについての御見解をお伺いしたいと思うのですけれども、まず具体的にはですね、国際法廷を取材すること自体が法廷の趣旨に反しないという誓約書を出さなければいけないということ自体が放送が偏っている内容であると安倍さんは言っているのですね。それから拉致問題を含めて北朝鮮側の意図になっていると、それから弁護側の反論が、証人の部分が無いのでやっぱり偏った内容だと判断したというふうに言っているのですが、そのことについてはどう思われますか?

長井 誓約書云々ということは私はまったく存じ上げておりません。ご案内の通り、現場で取材を担当したのはドキュメンタリージャパンでありまして、その点については私は一切聞いておりません。あと公平性ということについて関して言えば、私共はそれについては非常に心を砕いて番組を制作。ですからあくまでも29日に到るまでの教養番組部長とチーフプロデューサーを含めた、当然ネップ21*3、ドキュメンタリージャパンとの議論と言うのは取材がちょっと充分ではないという中でどうやって取材相手と距離を作るのかということがまず一番大きな問題としてございました。それとやはり歴史的な経緯の中できちっと位置付ける、世界の動きみたいなこともきちっと前提としておさえると。やはり4本のシリーズでその当時を見ていただければよくわかりのですが、2回目のシリーズは非常に、第2回目の「問われる戦時性暴力」に関しては、まあそれしかご覧になられない方もいらっしゃるわけですから、そこをどういうふうにこの回だけを見た人にもその辺のことがわかるか、伝わるかということで心を砕いたわけです。それでその法廷の不成立の条件といいますか、弁護人がいないとかですね、これはあくまでも民間の法廷であってなんら強制力を持つものではないとかですね、そういうことは番組の中では再三申し上げてですね、あくまでもこれは法廷の中身を、民間団体の方がやられたことをそのまま伝えるんではなくて、あくまでもそれはひとつの素材としてそこでの取り組みを素材としつつ、スタジオでの話だったりNHKが我々が独自に作るVTR等をはさみながらやっていくということなので、おそらくそこのところが民間団体でやられたことがそのまま放送するというように、中川さん安倍さんは受けとめられたのではないかなというふうに思っております。

伊田(38:05) 実際ご存知だと思うんですけど、実際には法廷では弁護側の証人がいたわけですよね。(長井頷く) で、安倍さんのコメントを見ると、法廷自体に無かったのか、あるいは放送されようとした番組自体にそこの証言部分が無かったのかはちょっとはっきりせずあいまいなわけですが…

長井 証言というのは? 弁護人の?

伊田 はい、弁護人ですね。

長井 ああ。

伊田 それはバウネットの昨日の会見ではですね、もともと入ってたのが途中の製作過程でカットされたと。(長井「キューレーター何でしたっけ…弁護士の代りに…」と近藤氏にたずねる)カットされたのが急に秦さん*4なんかのコメントでそれが入って無いから偏った法廷だったというような、それが無いから偏った法廷なんだというようなコメントを番組の中で話しているんですけれども、そのあたりの経緯というかお伺いしたのですが。

長井(38: 58) その弁護人がいないということに関して、その弁護人に代わるアミカツキを立てたということは、どこかの段階では編集の段階ではきちっと言うということになっていたのですが、結果的にどこでそれが入らなくなったかは今はっきりおぼえておりませんけれども、まあそれは落ちてしまったと。おそらくそれはそういうこともあって秦先生のですね、発言が非常に突出した形になってしまったんではないかというふうに思っております。当然それはその法廷の性格や、その法廷の持っている限界性みたいなことはきちっと言うべきでありますし、我々はそれに心を砕いたつもりではございますけれども、結果的には言い尽せなかったところはあるかもしれません。

伊田 最後の質問なんですけれども、海老沢さん経世会ということもあってですね、最終的には経世会の政治力で森派の方をおさえるのではないかという判断が上層部のほうであったのではないかという噂を聞いているのですが、それについてはどういうふうに思われているでしょうか。

長井 その辺の詳しい経緯は私は政治部記者では無いので詳しくはわかりませんけれども、とにかくひとつ私が印象として持ったのは、つまり、視聴者にソッポを向かれても、NHKの大多数の職員からソッポを向けられても、会長はやれるというふうに海老沢さんはお考えになっていた。つまりそれは政治家がソッポを向かなければ大丈夫なんだと、思っていたのだと私は思います。ですから私自身がほんとにどうすることもできないなと思ったのは、あれだけ視聴者の方々から批判が寄せられて自身での不払いが急増しているなかで、「私のところにはガンバレという声しか聞こえてこないんだよ」という発言があったかと思うんです。私はあれを聞いた時にこの人は完全に“裸の王様”なんだな、と。実際、話を聞きますと、たしかに会長室に来て話をする関連団体の社長さんや役員の方々はみんなガンバレガンバレと言っていたことは確かだったようですね。ただ、それはほんとにまに受けていたとすれば、非常に社会常識を疑わざるを得ないというふうに思います。

伊田 もう一点教えてください。今回の問題は、そもそも放送前に介入を受けたということがあるかと思うんですが、番組の製作過程或いは放送の前に何らかのかたちで中川安倍両氏に知るところとなった経緯についてどのようにお考えでしょうか。事前にというのはよくあるケースなのか、漏れるという、第三者がそういう番組の内容を知り得るということはどの程度…?

長井 それはあくまでも推測でしかないですからそうだとは言えないのですけれども、ひとつはバウネットの方の機関紙、インターネットも含めてかなりNHKでやりますということを宣伝されたんですね。おそらくそれをご覧になった方が安倍さん中川さんの方にですね、NHKでこんな番組をやろうとしているというふうにですねお伝えになったのではないかなというふうに私は推測しております。

? その関連ですけれども、それをご覧になった方というのはちょうど安倍中川両氏の圧力と同時並行というか、それより先行して1月の中旬から右翼団体がNHKにやってきて放送中止を求めますね。ということはこの右翼団体の人たちがそういう情報を持っていたということなんですか? その人たちということですか?

長井 そうだろうと思います。

? 最終的に4分カットされたオンエアされたものと同じもの、オンエアをご覧になった時のご感想をお聞きしたいのと、今回こういった行動を起こされることを思い至るときに、かつての番組メンバーに長田さんは声をかけたりはなさったかとこの二点について。

長井 まず後の方から言いますと、長田さんには一切相談しておりません。相談すれば迷惑がかかりますので相談しておりません。一つ目はなんでしたっけ…。

? …オンエアの時の…

長井 オンエアの時の、オンエアというか私自身製作過程で何回も試写をしているわけですから、まあはっきり言いますと29日の改変をもってこの番組の企画意図は大きく損なわれたと思っております。さらに三分カットされたことによって、非常に、さらに損なわれて番組としての体を為さないものとなってしまったというふうに私は認識しております。

? 今日、記者会見されるにあたって、昨日いろんな記者クラブを通じてたくさん通知がいったりしたんですけれども、NHK側からはですね記者会見しないようにというような何らかの圧力はありましたか?

長井 まあ圧力っていうことはありませんでした。ただ、まあなんといいますか、私の同僚から上の方の人たち、私のかつての上司がいま理事だったり局長だったりしますのでそういう方々が心配しているよとかですね、記者会見やめた方がいいんじゃないとか、そういうふうな話はありましたが、それがそういうふうな意を受けたものかは私はよくわかりません。

? やめた方がいいということは、記者会見をすれば長井さんの身の上になんらかの不利益があるんじゃないかと。

長井 というか、そうですね、そういうふうにみんな心配しているよというような話はございました。ただそれはそういうふうに上の方から直接の電話ではありません。同僚からの、友人として伝えるんだけどというふうな形で電話が何件かございました。

? すいませんちょっと資料が足りなかったので書かれていることかもしれないですけれども、さきほどから言われている最後の最後の3分カットの中身なんですが、どの部分が無くなったのかという具体的な部分と、最初の質問にもあったかと思うんですが、安倍さんたちが具体的にここをこういうふうに直せと言う具体的な指示、直接的には野島さんのリードということで言われておりましたが、そういう踏み込んだ指示があったのかどうかということと、最後に不利益をこうるかもしれないという心配が寄せられたということですが、その不利益を被ってもかまわないというご自身の決断があったのか、それは感想ですけれど三点お願いします。

長井 まず最初に、最後の三分でカットされたのは、中国人の被害者の方の紹介と証言部分。もうひとつは東ティモールの元慰安婦の方の紹介と証言部分。それから加害兵士、元日本軍の証言部分。この三点がまったく抜け落ちました。

それで安倍さん中川さんがどういうふうに発言したかということに関しては、総合企画室の報告書を見ればおそらく出ているのだと思いますけれど、私はそれほど詳しくは聞かされておりません。ただ、ひとつは日本国の天皇有罪の認定を下したということは、そういうふうなことは絶対やめろというようなことと、あとは中立のものにしろというふうな表現であったかに聞いています。

で、不利益の問題のことですが、まあおそらく不利益を被ることにはなると思うんですけれども、私自身もこの四年間、私もサラリーマンですし、家族もあります。まあ家族が路頭に迷うわけにはいかないので、この四年間非常に悩んで…(うつむく)。………………。でも、あの………………………やはり真実を述べる義務がある……というふうに…決断するに到りました。(涙をみせる)

? 川崎さんが書かれた本のなかでこの番組カットがあった後にですね、NHKの君が代の歌詞が一時流されると。それは右翼団体とのなんらかの取引があったんですなかったかと川崎さんが書かれていたのですが、そのことについてはなにかご存知でしょうか。

長井 まった存じ上げておりません。

田村(日経) 日経新聞の田村と申しますが、先ほど放送中止であったりということは日常茶飯事のように行われるようになってしまったというお話だったんですが、いまこの問題になっている番組以外にですね、具体的にご自身で担当されたものでこういう形でたとえば修正されたとか、あるいは周辺でご存知の番組でですねそういうものがあれば教えていただきたいのですが。

長井(49:23) まず噂で聞いていることはたくさんありますが、それについては私がやっぱりここで述べるべきことではないと思いますので、私自身が担当した番組のことだけを一点申し上げます。

私がデスクでやった番組で、同じ2001年の9月に放送されたNHKスペシャル「狂牛病 感染はなぜ拡大したのか」という番組がございました。

これはまだ日本で狂牛病というものがそれほど注目されていない段階で、私共の班の非常に優秀なディレクターがですね、イギリス政府が出した膨大な狂牛病に関する英文の報告書を全部読んでですね、企画を出してきた番組です。それで主にイギリスやヨーロッパを取材しですね、いち早く狂牛病の感染源が肉骨粉であるというようなことを番組で明らかにし、ヨーロッパからの輸入がされているので日本でも狂牛病が発生するおそれがあるということを初めて伝えたNHKスペシャルでした。

これは2001年9月16日の日曜日に放送されたんですけれども、それで視聴者からの非常に大きな反響があってですね、当時は再放の枠で「あなたのアンコール」という枠が日曜の午前中にあったんですね。翌週の「あなたのアンコール」という枠でこのNHKスペシャルが放送される予定が決まりまして、放送されるんだろうというふうに私共は思っておりましたが、自民党の農林部会でこの番組に対する批判が出まして、それがどういう形でNHKに伝えられたのかは私は存じあげませんけれども、海老沢会長の意を受けた当時の諸星報道局長がこの再放送をつぶしに回ってつぶしました。その時の理由としては、「政府が」、その時にはもう狂牛病の第一号が出ていたのだと思いますけれども、「政府がいま対策を考えているので再放送するんだったらそういう対策をいれてから再放送したらいいんじゃないか」というような、理由はそういう理由でしたが、その後結局再放送されないという事態になっております。

私が申し上げられるのはその一件のみです。

上杉(フリー)(51:48) フリーランスの上杉と申します。二点ありまして、29日の件ですが、午後に野島さんとか松尾さんが国会のほうから帰られてセンターに入った後にお会いしているのですが、長井さんが。(長井うなづく) その時に他に総合企画室で野島さん以外どなたか同席されたかということが一点と、先ほど一番最初の方で質問があったんですがその際に、政治家からの、まだ名前はわかっていないと思うのですが、圧力があったということで放送する番組の変更を求めたということですが、もう少し具体的にですね、野島さんから何を言われたのかということをお教え頂ければと思います。

長井 野島さんから永田町でなにかあったということは一切聞いていません。まずひとつは、野島さん一人です。それ以外の方はいらっしゃいませんでした。その時には野島さんは具体的に政治家からどうこう言われたとかですね、これでは了解が得られないなというような話は一切無かったです。ただ、番制局長室に入った時に、伊東律子番制局長が「この時期にはNHKは政治と戦えないのよ」というふうにいきなり切り出して、「天皇有罪とかそういうのは一切無しにしてよ」ということがいきなりございましたので、ああこれは政治家からかなり厳しい批判が来ているのだなということはすぐに理解いたしました。

上杉 「この時期に」と伊東さんが仰ったことは予算の…?

長井 そうです。そうです。まさにこの数日後に自民党の総務部会でNHKの予算説明というのが予定されていましたので、そういうことを意図していると私は直感的に理解しました。

日下部(サンデー毎日) サンデー毎日の日下部*5と申します。二点。ひとつ確認なんですけれど、政治家のだれかに事前に番組のビデオを見せたということはないのでしょうかということが一点と、もうひとつ、ご決断になった時期、こういう形でアクションを起こされることをご決断になった時期、先ほど11月というお話がありましたが、ご自身の中ではだいたいどの頃に決意が固まってその時に周囲の人たちに協力を、あるいはまったくまったくご自身ひとりでお決めになったのか、その辺をお聞かせ下さい。

長井(54: 19) まず、ビデオに関しては見せていないと思います。もしビデオを見せているようなことがあれば私が、デスクというのは現場の責任者では無いですけれども、現場の作業一切をとりしきっていますので、それは全部わかります。ビデオということは無いと思います。おそらくメモ、なんらかのメモで説明したのではないかというふうに私は理解しております。

決心するに到った時期ですが、これは自分で11月ですやはり。11月に、まあ家内とはずっと話をしていたのですけれれども、家内の了解を得られたということで踏みきりました。それでそんなに多くの人には相談しておりません。私のほんとに信頼すべき友人数名と、あとは組合の方に先ほど申し上げた通り相談しただけです。

日下部 信頼すべき上司という方が先ほどから出ていらっしゃいますけれど、それがまあ安倍さんと中川さんの関与と言うのがはっきり仰られたと思うんですけれども、信頼すべき上司は直接たとえば安部さん中川さんに会った時に同席された方なのか、具体的になっちゃうとアレなんですけれども。

長井 つまりですね、私自身の問題として私がどういう不利益を被ってもそれはかまわないんですけれども、そういう形で、NHKの上層部にも非常に良心を持った方がいらっしゃるわけで、その方まで私は巻き添えにするつもりは全然ないので、それについては一切お答えできません。

?(56:58) 昨日(1月12日)ですね、安倍さんはこうコメントを申しておりますね。番組についてですけれども、「拉致問題に対する沈静化をはかり、北朝鮮が被害者としての立場をアピールする工作宣伝活動の一翼を担っているとにらんでた」(長井氏、プッと吹出して笑う)その上「薄汚い意図を感じる」とまで彼はコメントを出しておりますけれども、改めてですけれどこのコメントについてどうお考えですか。*6

長井 まったく事実無根だと思います。 NHKの中にはたしかにいろんな思想信条を持った職員が当然いると思うんですけれども、当然、番組化する、おそらくみなさんが記事を書くときも同じだと思いますが、当然それは企画会議を何回も経て企画が通るか、採択されるか採択されないか、それでまた取材した後もこれはまだ素材が足りない、取材が足りないということで追加の撮影だとか、延長作業ということで非常に大勢の方の制札現場に目が入るわけですよね。ですからたとえ一人二人の人間がなにある政治的意図や目的を持ってやろうとしてもそういうものは全部途中でふるいに落されてしまいますから、そういうふうな意味でNHKの中立公正、番組の中身に関してのですね、私は保障されているというふうに思います。ですからそういう政治意図というのはあり得ないですね。

? このコメント最初に聞いてどんなふうに思われましたか。

長井 や、びっくりいたしました。

(ビデオ中断)

? 報告書がすべてを物語っているところもございます。その報告書がどこにあるのかという、その存在自体、あるいはそれは公開の可能性等々どのようなことであるかと。ちょっとそのあたりについてお願いします。

長井 公開の可能性は私は全然わかりませんけれども、通常こういうふうな事態が起るとですね、NHKはきちっとした官僚機構がございますから、だいたい文書にしてメモとか報告書というかたちで会長の方に報告されるのが通常です。ですからまずひとつは総合企画室が作った報告書と言うのが、総合企画室と会長室にあると思います。番組制作局が作った報告書も同じように番組制作局と会長室にあると思います。

? わかりました。ということは総合企画室が文書をつくったということは、そういう事実はあるということですね。

長井 番組スタッフが作ったものは非常に後で、数ヶ月後にかなり体系的なものを作ったように聞いておりますが、総合企画室が作ったものは、体系的なものというよりは逐一、こういう発言があった、こういうやりとりがあったものだというものだというふうに推測しております。

近藤 ちょっとお待ち下さい。若干補足されていただきますけれども、長井さんがこういうことをやったからといって内部告発のこの手続きがストップすると、やらなくていいということはどこにも書いておりませんので、こちらとしては内部通報のこの制度にしたがってですね、いまおっしゃった報告書のことも含めて、きちっとそれは内部通報制度の推進室がやっていただけるものだというふうにはこちらは考えておるんです。きちっとした結果をですね、だから長井さんがこういうことをやったから、この内部通報の制度をストップしてということはどこにも書いてありませんので、きちっと最後まで調査して、報告書を出して、きちっと公表してほしいというのが、もちろんこちらの希望であるということになります。

? すいませんもう一点簡単に。先ほど中川氏に見せたのはビデオではなくメモではないかというお話でしたが、これは台本というのが出来ていて、台本をめぐって会合が行われていた(長井氏首を横に振る)と思いますが、台本を見せたんでしょうか?

長井 台本は見せていないと思います。もし台本をコピーしろということであれば、そのことも私が把握すると思いますので、あくまでも先程来説明しているように野島さんも松尾さんもですね、そこで29日にはじめて見たわけなんですね、番組についてはですね。で、私の台本というのはまだ完成稿ではなくてですね、試写段階のものは完成稿ではなかったわけです。ですからこれを持っていくということはちょっと考えられないので、あくまでも見た結果として、まずは番組についてどんな番組なんだという概略はメモでまず説明して、最終的にはその変更点を伝えたのかということはわからないのですけれども、ビデオや台本を中川さんに渡すということは無かったというふうに理解しております。

? 今回、こういう話は今後起きては困るとおもわれるんですけれども、こういう問題を根本的に防ぐためにですねどういう手だてをとればいいか。現場にいらして考えておられるところがあれば聞かしていただきたいのですが。

長井 先程も申し上げましたけれども、やはりきちっとした制度を作るという、そういう倫理規定が当然必要ですし、制度を作ってやっぱりそういうこと、つまりある政治勢力や派閥のために行動するようなことがあったら直ちに処罰するような、そういう制度がまず必要なんじゃないでしょうか。あとはやはりそういうことを二度と起こさないという意味で、NHKの経営陣がですね、固い決意でそういう制度やいろんなものを作っていかなければならないのではないかと思っております。

(赤旗)(1:01:53) 赤旗のにだい(?)と申しますが、長井さん、いまどのようなお仕事をされているのか、コンプライアンス委員会に訴えて以降お仕事に変化があったのか、そしてあと今後ですね、ご自分の身分を含めて事態がどのように展開していくのか、またいってほしいのかということをお聞きしたいと思いますが。

長井 私は現在、所属はここにご案内の通り、教育番組センターのチーフプロデューサーですが、放送総局の放送80周年事務局というところに出向しております。内部で出向しているという形ですね。放送80年の関連の特集番組や世界遺産、そのような番組を担当しております。一昨年は放送テレビ50周年ということで、テレビ50年関連の特集番組「国際協力イベント 未来の航海」とかですね、そういうふうなものを担当しておりました。

あともう一点ございましたね。とにかく私自身はそういう大きいことを言うつもりは全然無いんですけれども、やはり先程来申し上げた通り、海老沢会長に責任があるわけですから、ただちに辞任していただきたい。経営陣も責任がありますから経営陣も直ちに辞任して頂いて一日も早く新しい会長と新しい役員、経営体制のもとでNHKが徹底的な改革を進めて蘇ってほしいと、そういうふうに思っております。

 各社よろしいでしょうか。…。では一時間過ぎましたのでこのへんでおわりにしたいと思います。長井さん、近藤弁護士どうもありがとうございました。

長井 どうもありがとうございました。(拍手)

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*1:誕生日の日は年齢確認に必要無い個人情報なので伏せました。

*2:おそらく週刊金曜日副編集長の伊田浩之氏

*3:ネップ21=NHKの関連会社エンタープライズ21。ドキュメンタリージャパンと共同してシリーズを企画提案した会社。1991年8月号の『創』の「情報の焦点」には海老沢会長と北朝鮮から金の延棒をもらっていた金丸信(自民党元幹事長)との深い関係について書いてあります。(この情報は「噂の眞相」91年9月号特集3「NHK島会長のクビをあっさり飛ばした魑魅魍魎の“正体”」にも書いてあります)「島さんと金丸さんの間に亀裂が生じた原因は、先頃理事を外された海老沢勝二さんらしい。理事を外されてNHKの小さな名もないようなところの役員の椅子を振り分けられた海老沢さんが金丸さんに泣きついた。そこで怒った金丸さんがNHKに怒鳴り込んだわけです。結局、海老沢さんは最終的にNHKエンタープライズ社長の椅子をつかんだらしく、一件落着となったが、これを機会に金丸さんの側近が『島会長の独断専行は許せない』と反島戦略を展開し始めたらしい」。海老沢勝二は、確かに六月二十六日の株主総会で「NHKエンタープライズ社長」に選ばれていた。」

*4:秦郁彦(はた いくひこ)氏のこと。歴史修正主義者のひとり。NHKは放送二日前に急遽秦氏に取材し、番組では「法廷」に対して疑義を連ねたネガティブコメントを二度、計約3分30秒使った。

*5:おそらくサンデー毎日の日下部聡氏。過去記事例→「これは平成版 国家総動員法!?「小泉戦時国家体制」総仕上げ「国民保護法案」の仰天内容 」 http://www.asyura2.com/0403/senkyo3/msg/390.html 日下部聡(サンデー毎日記者)○「週刊金曜日問題で大困惑 筑紫哲也キャスターの弱点」(『サンデー毎日』2002.12.15) http://www.jca.apc.org/mekiki/vol14_1.htm

*6:2005年1月17日のVAWW―NETジャパンの声明によると、安倍氏が「法廷」について「被告と被告側の弁護人がいない」「主催者の松井やよりさんが、裁判の会場を九段会館に決めたのは悪の根源である皇居に一番近いからだと明言した」などとしている点について、具体的に反論しています。「(1) 法廷開催二カ月前に全裁判官名で、当時の森首相に被告(国)側弁護人の出廷を要請したが、何の応答もなく、裁判官が弁護士を「法廷助言人」として被告側の弁護をとり入れた(2)松井やよりさんは法廷の主催者ではなく、安倍氏指摘の内容を発言したこともない(3)会場を九段会館にしたのは宿泊施設を併設して予約可能だったからにすぎない。」 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-01-18/15_02.html この声明が事実だとすると、安部氏の言動に対しVAWW―NETジャパンは名誉毀損で告発することができそうです。

(撮影:ビデオニュース)
http://www.videonews.com/asx/011305_nagai_300.asx

Wednesday, October 17, 2007

NHk

NHK裁判報道で見落としてはならないこと
ゲスト:山田健太氏(専修大学助教授)

東京高裁は先月29日、NHKに対し、不当に番組内容を改編して精神的苦痛を与えたとして、女性国際戦犯法廷を主催した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)への200万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。

この裁判の結果についてはメディア各社がそれなりに大きく紙面や時間を割いて報じてはいるが、期待権や編集権に関わる諸問題が大きく取り上げられている割には、どうも歯切れが悪い点が一つ目につく。それは、結果的に裁判では明らかにならなかった、「政治介入の有無」と「そもそもなぜNHKは政治介入を許してしまうのか」という最も基本的な問題だ。そこをきちんと検証しなければ、この問題は単に「取材者は取材協力者にいたずらに期待を持たせるようなことを言ってはいけませんよ」という取材上のマナーを一つ規定したに過ぎないものに矮小化されてしまう恐れがある。

この裁判では、予算や人事を国会に握られているNHKの上層部が、「説明」と称して、大挙して有力政治家に対して陳情を行っている実態が明らかになった。そもそも国会の場で公然と議論をすべきNHK予算の中身を、なぜ事前に密室の中で説明して回ることが問題にならないのかも解せないが、本来政治を監視しなければならない立場にある報道機関が、政治家に何かを「お願い」しなければならない立場にあるとすれば、それ自体が重大な問題だ。その過程でNHKがさまざまな政治的圧力に晒されることは誰の目にも明らかだからだ。今回の判決では具体的な圧力の存在までは証明されなかったとなっているが、それはそもそもこの裁判の中心的な争点ではなかったし、それが裁判では「具体的」には立証されなかったからといって、あたかも政治的圧力がなかったとするかのような一部の報道は論外である。

今回名指しをされている安倍晋三氏や中川昭一氏は、今や現職の首相と与党の政調会長という日本の最高権力者の地位に就いている。その有力政治家らによって行使されたとされる影響力が、「具体的」なものだったのか、あるいは、NHK側が「具体的ではない」政治家側の意図を「忖度」して自主的に番組内容を改編したのかの違いは、この際ほとんど意味をもたない。要は、NHKの政治に対する構造的とも言える脆弱性故に、実質的な編集権を自ら放棄し、結果として視聴者の知る権利が損なわれたこと、そしておそらく同様のことが日常的に行われているにちがいないことこそが、ここでは最大の問題なのだ。

メディアと政治の関係に詳しい山田健太氏は、今回の問題の本質は政治の言論介入が強まる中、「メディアが過度に防御的になっており、逆にそれが権力に対する脆弱性を高めていること」であると主張する。そうした上で、「NHKは単に普遍性や中立性を謳うだけでなく、BBCのように多様性を広げる方向へ外部からの力をもって変えていく必要がある」と、この裁判の結果が具体的な行動につながることの重要性を説く。

また、この裁判が露わにしたもう一つの問題として、山田氏は他の主要メディアがこの裁判の本質から意図的に目をそらしたかのような報道をしている、いわばメディア業界全体の体質問題をあげる。再販、記者クラブ、税制面での優遇等々、数え上げたらきりが無いほど多くの特権を享受するメディアが、知らず知らずのうちに既得権益者として完全に政治に取り込まれているのではないかとの懸念は色濃く残る。

山田氏はまた、「強者が弱者をいじめる」かのような形で繰り広げられる昨今の高額の名誉毀損裁判の実態にも懸念を表明する。此度のNHK裁判は市民団体が巨大メディアを訴え勝訴する異例のケースとなったが、損害賠償額に応じて訴訟費用が増額する日本の裁判制度の特徴故に、政治家や大企業ばかり次々とメディアを訴え、一般市民は泣き寝入りするしかないというお決まりのパターンは、権力のメディア介入をより容易にしてしまっている。雑誌の電話取材に応じたフリージャーナリストが、オリコンから5000万円の損害賠償訴訟を起こされたケースも、その一例と言えるだろう。

ことほどさようにメディアをめぐる環境は厳しくもあり、また深刻でもある。しかし、メディアの荒廃が市民社会全体に多大な悪影響を及ぼしていることが否定できない以上、この問題を放置することはできない。そのためにはNHK裁判で明らかになった問題を一つ一つ検証し、それを解決に向けた行動へと結びつけていくことが重要となる。

今週のマル激では、NHK裁判が明らかにしたNHK問題とは何なのか、メディアの構造問題とは何なのか、メディアと政治の関係は今どうなっているのかを、山田氏とともに考えた。

Tuesday, October 16, 2007

ssci

SOCIAL SCIENCES CITATION INDEX - COMMUNICATION JOURNAL LIST

1. AUGMENTATIVE AND ALTERNATIVE COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0743-4618
2. COMMUNICATION MONOGRAPHS
Quarterly
ISSN: 0363-7751
3. COMMUNICATION RESEARCH
Bimonthly
ISSN: 0093-6502
4. COMMUNICATION THEORY
Quarterly
ISSN: 1050-3293
5. CRITICAL STUDIES IN MEDIA COMMUNICATION
Bimonthly
ISSN: 1529-5036
6. CYBERPSYCHOLOGY & BEHAVIOR
Bimonthly
ISSN: 1094-9313
7. DISCOURSE & SOCIETY
Bimonthly
ISSN: 0957-9265
8. DISCOURSE STUDIES
Quarterly
ISSN: 1461-4456
9. EUROPEAN JOURNAL OF COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0267-3231
10. HARVARD INTERNATIONAL JOURNAL OF PRESS-POLITICS
Quarterly
ISSN: 1081-180X
11. HEALTH COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1041-0236
12. HUMAN COMMUNICATION RESEARCH
Quarterly
ISSN: 0360-3989
13. INTERNATIONAL JOURNAL OF CONFLICT MANAGEMENT
Quarterly
ISSN: 1044-4068
14. INTERNATIONAL JOURNAL OF LANGUAGE & COMMUNICATION DISORDERS
Quarterly
ISSN: 1368-2822
15. INTERNATIONAL JOURNAL OF PUBLIC OPINION RESEARCH
Quarterly
ISSN: 0954-2892
16. JAVNOST-THE PUBLIC
Quarterly
ISSN: 1318-3222
17. JOURNAL OF ADVERTISING
Quarterly
ISSN: 0091-3367
18. JOURNAL OF ADVERTISING RESEARCH
Bimonthly
ISSN: 0021-8499
19. JOURNAL OF APPLIED COMMUNICATION RESEARCH
Quarterly
ISSN: 0090-9882
20. JOURNAL OF BROADCASTING & ELECTRONIC MEDIA
Quarterly
ISSN: 0883-8151
21. JOURNAL OF BUSINESS AND TECHNICAL COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1050-6519
22. JOURNAL OF COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0021-9916
23. JOURNAL OF COMPUTER-MEDIATED COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1083-6101
24. JOURNAL OF HEALTH COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1081-0730
25. JOURNAL OF MEDIA ECONOMICS
Quarterly
ISSN: 0899-7764
26. JOURNAL OF SOCIAL AND PERSONAL RELATIONSHIPS
Bimonthly
ISSN: 0265-4075
27. JOURNALISM & MASS COMMUNICATION QUARTERLY
Quarterly
ISSN: 1077-6990
28. LANGUAGE & COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0271-5309
29. LEARNED PUBLISHING
Quarterly
ISSN: 0953-1513
30. MEDIA CULTURE & SOCIETY
Bimonthly
ISSN: 0163-4437
31. MEDIA PSYCHOLOGY
Quarterly
ISSN: 1521-3269
32. NARRATIVE INQUIRY
Semiannual
ISSN: 1387-6740
33. NEW MEDIA & SOCIETY
Quarterly
ISSN: 1461-4448
34. POLITICAL COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1058-4609
35. PUBLIC CULTURE
Tri-annual
ISSN: 0899-2363
36. PUBLIC OPINION QUARTERLY
Quarterly
ISSN: 0033-362X
37. PUBLIC RELATIONS REVIEW
Bimonthly
ISSN: 0363-8111
38. PUBLIC UNDERSTANDING OF SCIENCE
Quarterly
ISSN: 0963-6625
39. QUARTERLY JOURNAL OF SPEECH
Quarterly
ISSN: 0033-5630
40. RESEARCH ON LANGUAGE AND SOCIAL INTERACTION
Quarterly
ISSN: 0835-1813
41. SCIENCE COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 1075-5470
42. TECHNICAL COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0049-3155
43. TELECOMMUNICATIONS POLICY
Monthly
ISSN: 0308-5961
44. TEXT & TALK
Bimonthly
ISSN: 1860-7330
45. TRANSLATOR
Semiannual
ISSN: 1355-6509
46. WRITTEN COMMUNICATION
Quarterly
ISSN: 0741-0883

Wednesday, July 25, 2007

contents

コンテナーからコンテンツを取り戻せ



最近のエントリーでは、日米のメディアの違いについて考えているのだが、たとえば日本のテレビの特徴を「コピーワンス問題からほの見える日米のテレビと映画の立場
に引用した言葉でみると

 これに対して,日本ではいわゆる在京キー局が(別会社に制作を委託するにしても)番組の著作権を保有するケースが多い。米国とは異なり,番組(コンテンツ)と放送ネットワーク(メディア)が分離していないのだ。(IT proのコラム「Joostに見るグローバルTVの可能性と限界(後編):日本のテレビ局はなぜインターネット事業に消極的なのか」より)

 放送局は制作会社(コンテンツ)を囲い込み、自分たちに都合のよい番組を作り出す。たとえば「ネットがテレビを放送する日で紹介した「著作隣接権」などが放送局に都合のよい法律ができている。「著作隣接権」とは

 放送事業者は、コンテンツの制作と流通がドメインであるため、自ら制作した番組の著作者となるほか、番組を放送しただけでも「著作隣接権」が付与される。

(中略)

 しかし同時に、⑤放送のための一時的固定と、⑥商業用レコードは許諾を受けずに利用して後刻2次使用料を払えばよい、といった規定があるため、放送の素材として著作物を利用することが容易となっている。

 テレビ番組には、放送局や脚本家のほかに、出演する俳優、使用する音楽のレコード会社や歌手といった、数多くの権利者が関係している。

 そこで著作権上の「放送」であれば、前述のとおり商用レコードについては事前の許諾なく使用して、事後に使用料を払えばよい。(「ネットがテレビを飲み込む日」)

 制作会社はこの法律のために、テレビ局と関係なく番組を作ることは著しく制限されている。またスポンサーと電波管理は放送局が握っているため、独自に作りたい企画があっても、テレビ局を通さなければ制作すらできないのだ。

 このようなテレビ局と制作会社の関係をどう表現したらいいのだろうと思っていたら、「サイバージャーナリズム論」(歌川令三、湯川鶴章、佐々木俊尚、森健、スポンタ中村著/ソフトバンク新書)でこんなエピソードが紹介されていた。

 米国の新聞業界にもインターネットのポータルサイトがニュース配信するという新たな敵が出現した。

 そこで、米国の新聞経営者は「紙」へのこだわりをかなぐり捨てて、新たな“敵”と対決すべく「電子部門を強化せよ」の戦略に転換したのだ。彼らの合言葉は「コンテナーではなく、コンテンツに注目せよ」だ。このセリフを流行らせたのがAP通信社のトム・カーリー社長で、メディア研究シンポジウムの席上、「問題はコンテナー(container)にあるのでなく、コンテンツ(contents)をいかに活用するかだ」と述べた。

  コンテンツとは情報の中身、コンテナーとは情報の容れ物のことだ。新聞社は長年にわたり、マスコミ界で情報のコンテンツ作りの王者だった。それを新聞とい う紙製のコンテナーに詰め込んで、読者に運んでいた。ところが、電子メディアの出現で、コンテナーの鍵をこじ開けられてしまった。

  カーリー氏は、電子時代の現実を“中身”と“容れ物”という二つの「C」の対比で表現した。「今や紙だけが情報伝達の運搬用具ではなくなった。容れ物の形 態にこだわらずに、新聞社のもつ素晴らしい情報コンテンツをいかに効率よく売りさばくか。それがこれからの課題だ。電子でしっかりと広告を稼げ」というの が、彼の言わんとするところだ。

 新聞協会発行の雑誌『PRESSTIME』は、こんな社説を掲げている。

新 聞社の電子版の広告は爆発的に伸びる。だから電子新聞に掲載する情報は出し惜しみするな。サイトに壁を作るな。そんなことをすると、検索エンジン経由で せっかくアクセスしてきた読者に悪い印象を与え、広告集めにマイナスの材料を自ら作ることになる。タダで閲読しているからといって「電子版」の読者を馬鹿 にしてはいけない。「紙」「電子」にかかわらず読者は本来利口で熱心で協力的なのだ。コミュニティーのニュースや写真を提供してもらい、電子新聞の内容を もっとコミュニティー密着型にして新規の閲読者を獲得せよ。(「サイバージャーナリズム論」第一章 新聞ビジネス崩壊の予兆/歌川令三著)

 しかし、日本の新聞はインターネットにニュースを流すものの、肝心な部分は出し惜しみしたり、数日立つとリンク切れになったりする。古い記事は有料データベースでどうぞというわけだ。僕は「無料の知識と有料の知識でこんなことを書いている。

  たとえば、新聞メディアがそうだ。新聞はインターネットで新しいニュースを流している。しかも無料である。ニュースを報道するには、かなりなコストがかか る。そのコストは、新聞を購読している読者の新聞購読料と広告とで成り立っている。したがって、同じニュースであっても、インターネットでは無料になり、 新聞では有料となる。もし読者が一斉に、インターネットでニュースが見られるから、新聞は要らないと言い出したらどうなるか。新聞はインターネットの ニュースを有料にできるのだろうか。(もちろん、新聞各社は過去の新聞データをデータベース化して有料化している。でも、新鮮なニュースが無料で、古いニュースが有料なんてやっぱり変だ。)

 なぜ、アメリカ並みに広告で儲けようとしないのか。歌川氏は次の4点を挙げている。①購読料金。日本は3925(朝夕刊)、アメリカは954(ニューヨーク・タイムス朝刊配達料1ドル120円換算)②アメリカは、新聞専売店がなく配達はアルバイトの子供③新聞社の収入構造。日本(販売:広告65%:35)アメリカ(販売:広告15%:85)

 高値で売って代理店と山分けする日本、安値で売って広告で儲ける米国、この異なるビジネスモデルが、「電子」時代対応の日米経営戦略の際立った違いとなって表れる。米国は販売収入依存が小さいがゆえに、「紙」新聞をあきらめて「電子」で広告を稼ぐ戦略転換が可能だ。(「サイバージャーナリズム論」第一章 新聞ビジネス崩壊の予兆/歌川令三著)

 ここでも「コピーワンス問題からほの見える日米のテレビと映画の立場のアメリカの映画会社の立場と共通点が見えてくる。

  アメリカではコンテンツとコンテナーが分離されているために、インターネットでも自由に商売ができるが、日本はコンテンツがコンテナーにがんじがらめに掬 い取られているゆえに、インターネット上では商売ができない。新聞などは、コンテンツに金を払っているつもりだったが、実はコンテナーの面倒はもちろん、 インターネットの無料ニュースの資金まで新聞購読料に含まれていたのである。

 CNET Japanのブロガーでも有名な佐々木俊尚氏は第三章でこんなことを書いている。

 メディアを考えるときに、コンテンツとコンテナーという分け方がある。番組や記事がコンテンツであり、それを人々に伝える電波や印刷物、ウェブサイト、メールなどがコンテナーだ。

 本当の通信と放送の融合というのは、メディアを「コンテナー本位制」から「コンテンツ本位制」へと移行させることである

  これまでのテレビ局は電波免許というコンテナーにしがみつき、コンテンツ制作者である番組制作会社を下請けとしていじめ抜いてきた。だが今後、ブロードバ ンドの普及などでテレビが多チャンネル化していけば、秀逸なコンテンツを作るクリエーターこそが重要なのであり、どのチャンネル(コンテナー)で番組を送り出すかは重要でなくなる。(「サイバージャーナリズム論」第三章 テレビ局をめぐる大いなる幻想/佐々木俊尚著)

 思えば、「本当に次世代DVD、華開くのかで取り上げたDVDすら、コンテンツを入れたコンテナーに過ぎないのであり、さらにもっと考えればAV家電そのものがコンテナーに過ぎなかった。インターネットは、このコンテナーとコンテンツを分離する巨大な波となって、メディア世界に襲い掛かっているのかもしれない。

Tuesday, July 17, 2007

ニューズによるダウ・ジョーンズ買収で暫定合意=関係筋

ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米ニューズ・コーポレーション(NYSE:NWS.A)は16日、米ダウ・ジョーンズ(NYSE: DJ)を、当初からの提示額である50億ドル(1株当たり60ドル)で買収することで暫定合意した。17日夕方、ダウ・ジョーンズ取締役全員が出席する会 議で承認の可否を審議する。関係筋が明らかにした。

両社による話し合いとしては最後になるかもしれない16日の交渉で、ダウ・ジョーンズのリチャード・ザンニーノ最高経営責任者(CEO)、企業アドバイ ザー、独立取締役2人を含む出席者は、ニューズが4月中旬に提案したダウ・ジョーンズ買収で暫定合意に達した。ニューズのルパート・マードック会長は、買 値引き上げを迫るダウ・ジョーンズの圧力に抵抗した。1株当たり60ドルという買値は、ニューズによる買収提案が明らかになる前のダウ・ジョーンズの株価 を67%上回る水準。交渉の出席者によるとマードック氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の編集長だったポール・スタイガー氏をニューズの 取締役に推薦する可能性を示唆したという。

今回の合意には、最大のハードル、つまりダウ・ジョーンズの議決権の64%を握るバンクロフト一族の承認を得るという関門が残っている。ザンニーノ氏と 話した人物によると、同氏はニューズに、一族の中で賛否が拮抗(きっこう)しており予断を許さないことを示唆したという。

バンクロフト一族の財産の管理受託者で、一族を代表して交渉に臨んでいるマイケル・エレファント氏は、一族による最終投票に先駆け、19日にニューズと の暫定合意について一族全員に説明する予定だ。同氏は一族に意思決定のため数日の猶予を与えるとみられ、来週結論が出ることになりそうだ。ただ、一族は依 然としてニューズへの売却について意見が大きく割れている。一部はニューズへの売却を受け入れているが、ほかの選択肢を懸命に探しているメンバーもいる。

ダウ・ジョーンズ株の全議決権の約15%に相当する一族の財産を受託管理しているクリストファー・バンクロフト氏(55)は過去数週間、ヘッジファンド や未公開株投資会社などに接触し、ニューズによる買収を阻止できるだけのダウ・ジョーンズ株を取得するよう持ちかけていた。一族のメンバーでダウ・ジョー ンズ取締役のレスリー・ヒル氏は、スーパーマーケット業界への投資で知られる資産家のロン・バークル氏を含む投資家と会うよう、ダウ・ジョーンズに迫って いた。バークル氏はダウ・ジョーンズへの別の提案を考えていた。ヒル氏の母親は、同社株の全議決権の約15%に相当する一族の財産を受託管理または保有し ている。

ニューズが提示額引き上げを渋ったことは、バンクロフト一族の中でニューズによるダウ・ジョーンズ買収に反対する意見を一層強固にした可能性がある。ダ ウ・ジョーンズに近い筋によると、同社の一部の幹部や独立取締役は、一族の意見が割れていることが、ニューズの提示額を少しでも引き上げることにつながれ ばと期待していたという。ダウ・ジョーンズ株の16日終値は前週末比0.54ドル(0.94%)安の56.95ドル。その後の時間外取引では上げに転じ、57.45ドルで取引された。

16日の交渉は、マードック氏、ザンニーノ氏が出席したランチミーティングから始まった。ダウ・ジョーンズは、ダウ・ジョーンズ・ニューズワイヤーズに加え、ウォール・ストリート・ジャーナルとその欧州版・アジア版・電子版、バロンズ、 ファー・イースタン・エコノミック・レビュー、マーケットウオッチ、ダウ・ジョーンズ・インデックス、地方紙オッタウェイを発行している。またファクティ バを保有し、ハースト・コーポレーションと共同出資でスマートマネーを運営している。さらに世界のCNBCテレビや米国のラジオ局にニュースを提供してい る。(日本経済新聞2007年7月17日)

Monday, July 16, 2007

BBC

[월드 뉴스] BBC 연례 보고서: 뉴미디어 부문

BBC 온라인은 BBC 의 가장 빠르게 성장하는 서비스로 올해 3월 31일까지 1천 6백만 순 방문자를 기록하고 구글이나 MSN 사이트바 보다 더 많은 영국 웹 유저를 확보하였다. 페이지 임프레션 (광고 노출 횟수) 은 현재 월 평균 30억 회 이상이고, BBC 온라인 서비스에 드는 비용은 시청료 납부자 한사람 당 월 49 펜스에 해당한다.

BBC는 2006년부터 2007년 까지 웹 콘텐츠에 1억 1천 6백만 파운드를 사용하였고, 교육 서비스인 BBC 잼에 3,700 70만 파운드를 추가 사용하였는데 BBC 잼은 올해 3월 폐지되었다.

BBC 잼
쌍방향 교육 서비스인 BBC 잼은 상업적 라이벌들의 항의로 운영이 중단되었다. BBC 잼은 중단될 때까지 5세 부터 16세 까지를 위한 “뛰어나고 쌍방향적인 콘텐츠”를 광범위하게 제작해왔다.

BBC는 그러나 “교육은 여전히 우리 사명의 중요한 부분이고 우리는 이 중요한 분야에서 시청자들에게 봉사할 방법을 계속 연구할 것이다.

아이 플레이어 (iPlayer)
철저하고 아마도 전례 없는 공적 검증의 기간을 거친 끝에 BBC는 자신들의 주문형 서비스인 아이 플레이어 (iPlayer) 가 “주문형 세계에 실질적 진보”를 이룰 수 있기를 희망하고 있다.

BBC 의 아이 플레이어 (iPlayer) 주문형 서비스에 들어간 투자비를 포함하여 개발비용은 인프라 구축에 추가로 들어간 560만 파운드까지 모두 3,200만 파운드였다.

BBC.co.uk
내부 서버 경과 기록에 기반하여 BBC.co.uk 는 올해 3월 31일까지 매주 평균 영국의 순방문자가 1,480만을 기록하여 지난해 1,230만 명보다 증가하였다. 해외 사용자 가운데 순방문자는 매주 추가로 1,350만을 기록하였다.

TNS 미디어 트래커가 만든 연구를 토대로 한 조사를 보면 BBC.co.uk의 트래픽은 매달 1,430만 순방문자로 2005년-2006년 기간의 1,370만보다 증가하였다고 평가되었다. BBC 사이트는 모두 560만 시간 분량의 오디오와 비디오 콘텐츠를 전 세계에 제공하여 지난해의 460만 시간보다 증가하였다.

라디오는 가장 인기 있는 스트리밍 서비스로 290만 시청시간을 기록하였다. 주문형 오디오는 190만 시간을, 그리고 다른 비디오와 오디오 서비스는 120만 시간을 기록하였다. BBC.co.uk 의 매시간당 콘텐츠 비용은 16 펜스로서 지난해 보다 1페니가 감소하였다.

BBC 뉴미디어 콘텐츠의 30 %는 이제 BBC 외부 주문으로 제작되는데 비비시의 자발적인 독립프로덕션 할당 목표 25%를 초과하여 할당량을 지난해 보다 거의 두 배나 늘렸다.

BBCi
디 지털 TV 시청자를 위한 BBCi의 빨간 버튼 서비스는 해마다 30%의 성장을 보이고 베스트 쌍방향 텔레비전 서비스로 국제부문 에미상을 수상하였다. BBCi는 지난해 여름 독일 월드컵 동안 535만 이용자와 인터넷을 통해 생중계와 하이라이트를 시청한 590만 이용자를 기록할 정도로 인기가 있었다.

2007년의 연구 결과 7세에서 15세의 3분의 2가 BBCi 를 이용한 것으로 나타났다. BBCi의 쌍방향 서비스인 필름 네트워크는 300 개의 영국 단편 영화를 상영한다는 자신들의 목표를 25% 초과달성하였다

향후 발전
BBC는 올해 모바일 라디오 TV; 세컨드 라이프, 플리커와 유튜브에 대한 지역사회 지향적 프로젝트; 개인 녹화용 캐치업 서비스; 런던 동물원에서의 바코드 판독 실험과 장애인 이용자를 위한 포드캐스트를 포함한 다양한시도롤 하였다

“모비소드”가 인터넷 상으로는 인기가 있었지만 휴대폰을 통한 닥터후 방영 시도는 실망스러운 것으로 꼽혔다 BBC는 또한 기술의 거인들인 마이크로 소프트 및 IBM과 전략적 제휴를 맺었고 유튜브에 채널 하나를 출범시켰다.

BBC 의 미래상
BBC는 이제 ITV와 조인트 프로젝트로서 위성 TV 이용자를 위해 무료 서비스 제공을 목적으로 하는 프리샛 프로젝트와 휴대폰 서비스 그리고 회사를 “BBC 2.0” 시대로 이끌어 가는 데 우선 순위를 두고 있다.

“BBC 는 웹이 지배적인 정보제공 매체에서 자료가 이용자들에 의해 공유되는 매체로 변화를 계속함에 따라 BBC 2.0 시대를 준비하기 위해 해야 할 일이 어마어마하게 있다. 다시 말해 우리는 BBC 가 단순히 웹상에 존재하는 것이 아니라 웹의 일부가 되기를 바란다”고 BBC 측은 말했다.

BBC는 ‘미래 미디어와 기술부’를 비롯한 몇몇 핵심 부서를 2011년까지 샐포드로 이전할 예정이다 BBC는 BBC센터의 설비를 최신의 기술로 갖추기를 원한다.

* 출처 : 영국 가디언 신문 (The Guardian) 2007년 7월 3일
* 관련링크 : http://media.guardian.co.uk/bbc/story/0,,2117550,00.html
* 나종하 (한국언론재단 영국통신원 njh58wow@hanmail.net)


Thursday, July 12, 2007

BBC

英 BBC 신뢰위기…공개사과에 벌금까지
여왕 다큐 편집 실수로 체면 구겨…..프로그램 거짓연출도
영국의 공영방송 BBC가 다큐멘터리를 조작해 공개사과하는 등 잇단 물의로 신뢰성의 위기를 맞고 있다고 영국언론들이 일제히 보도했다.

BBC 는 여왕의 80주년 생일을 맞아 특별 제작한 '여왕과의 1년' 다큐멘터리 예고편에서 엘리자베스 2세 여왕이 왕관을 벗어달라는 미국의 유명한 사진작가 애니 라이보비츠의 요청을 완고한 태도로 거부하는 내용의 장면을 공개한데 대해 12일 공식 사과했다.

올해 가을 방영 예정인 이 프로그램에 담긴 이런 장면은 실제는 서로 다르게 찍은 것이지만 마치 한 시간대에 이뤄진 것처럼 편집한 것.

앞 장면에서 라이보비츠는 여왕을 향해 의복과 맞지 않으니 왕관을 벗어달라고 요청한다. 그러나 여왕은 그녀를 향해 차가운 시선을 보낼 뿐이다. 이어 여왕은 자신의 옷을 가리키며 "옷이 근사해보이지 않는다"고 말한다.

이어지는 장면에서 여왕은 걸어가면서 시종을 향해 "아무것도 바꾸지 않겠다. 이 같은 의복은 충분히 입었다"라고 말한다.

마치 여왕이 사진촬영을 거부하고 나온 듯한 인상을 주는 편집인 것.

그러나 실제 시종을 향해 말하는 장면은 앞선 장면보다 먼저 촬영한 것으로, 이는 편집실수였다고 BBC측은 해명했다.

앞서 BBC는 어린이 프로그램 진행도 일부 조작한 사실이 드러나 5만 파운드(약 9천300만원)의 벌금을 부과받게 됐다고 현지 언론들이 전했다.

BBC 는 지난해 11월 어린이 프로그램인 '블루 피터'에서 일일 드라마 '이스트 엔더스'의 등장인물에 관한 문제를 내고 유료 전화로 정답을 맞힌 어린이에게 장난감을 주려 했으나 기술적 결함으로 문제가 발생하자 거짓 연출을 감행했다.

실제 전화를 걸어온 어린이가 아니라 그 시간에 스튜디오를 견학 중이던 어린이에게 런던에서 전화를 건 것 처럼 해 정답을 말하도록 했다. 그러나 당시 스튜디오에서 이를 지켜본 사람이 뒤늦게 시청자 제보코너에 공개해 거짓연출의 전말이 드러났다.

영국의 미디어 감시규제기구인 오프콤은 BBC에 5만 파운드의 벌금 처분을 내렸다. (서울=연합뉴스)

NHK

NHKの「戦時性暴力」番組をBRCが「放送倫理違反」(朝日新聞)

「女性国際戦犯法廷」を取材したNHK教育テレビの番組が放映の直前に大幅に改変されたとして、出演者の米山リサ・ カリフォルニア大準教授が「名誉権が侵害された」などと申し立ていた問題で、「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)は31日、「名誉棄損は成立し ないが、人格権に対する配慮を欠き、放送倫理に違反した」との見解をまとめた。

問題の番組は、01年1月に放映された特集番組「問われる戦時性暴力」。旧日本軍の慰安婦問題を追及した民間法廷「女性国際戦犯法廷」をとりあげた。米山氏は「スタジオ収録時の発言を何の連絡もなく大幅に改変され、研究者としての立場や思想に著しい誤解を生じさせ、名誉権と著作者人格権が侵害された」などと主張していた。

BRCは「発言は捏造(ねつぞう)されたとは言えず、名誉棄損は成立しない」としながらも、「NHKが申立人への説明や了解を得ないまま編集したため、申立人の人格権に対する配慮を欠き、放送倫理に違反する結果を招いた」と米山氏の主張を実質的にほぼ認めた。NHKは同日午後6時からのニュースでBRCの決定を放送した。

<米山氏の話> BRCが放送倫理違反を認めたことは、番組が何らかの理由で大改変されたことが公に認められたということであり、率直に評価したい。

<NHK広報局の話> 決定が「企画の趣旨・意図が変更されたとまでは言えない」「名誉棄損は成立しない」とした点は当然だと思う。ただ、放送倫理に違反するとした点は、放送番組編集の自由の観点からみて残念な結論だ。(03/31 19:13) http://www.asahi.com/national/update/0331/025.html

Tuesday, July 03, 2007

NHK

政治介入は本当になかったのか NHK番組改変事件判決シンポジウムの報告

1月29日午前。東京高裁前では勝訴を喜ぶ喝采の声が上がった。太平洋戦争下での従軍慰安婦問題などをテーマとしたNHK番組改変をめぐり「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(以下バウネット・ジャパン)が原告となり、NHKの番組不当改変の責任を追及した裁判の2審で原告側主張が大幅に認容された。6年間にわたる闘いだった。これを受け、メディアの判決報道のあり方を討議する緊急集会が25日、東京・四ツ谷で開かれた。「政治介入は認定されなかった」との大手メディアの報道は判決内容を忠実に伝えたのであろうか。討議の内容を報告する。(佐藤あゆみ) 

NHKは「戦争をどう裁くか」とのETVシリーズの第2回「問われる戦時性暴力」で女性国際戦犯法廷に関する番組を01年1月30日に放送した。しかし、「戦犯法廷が歪曲されるなど当初の企画内容と番組の内容が異なる」として、法廷開催者のバウネット・ジャパンが、NHK,NHKエンタープライズ21(NEP21)、ドキュメンタリージャパン(DJ)を相手取り損害賠償訴訟を提起した。 
 
05年1月12日、朝日新聞は当時の官房副長官安倍晋三、中川昭一の両議員の番組への政治介入疑惑報道を行った。今回の2審判決は、NHKの番組制作・放送について「編集権限を濫用または逸脱した」「番組編集の自由裁量の範囲内との主張は到底で認容できない」とし、3社にバウネットへの計200万円の賠償支払いを命じた。 
 
シンポジュウム冒頭、原告のバウネット・ジャパンの東海林路得子共同代表は「メディアのあり方、民主度を問う上で重要な裁判となった」と総括。「加害の事実の立証、加害を裁くことで、元慰安婦らの尊厳を取り戻すのがこの訴訟の意義だった。基本的人権に関わる問題の報道放棄は、編集の自由を乱用した国家権力へのすり寄り」と糾弾し、今回の番組改変問題がいかにメディアの危機を招いたかを訴えた。 
 
報道が伝えなかったこと 
メディアの危機を訴える市民ネットワーク・メキキネットの板垣竜太氏は「判決を聞いた時、胸が躍った」と喜びを語った。しかし、判決当日のNHK、テレビ朝日、TBSなどのニュース映像を解析した結果、「胸を躍らせた部分が伝えられていなかった。むしろかなり歪められていた」と批判した。 
 
安倍首相の「政治家の不介入が、判決で明示された」との発言を各社が繰り返し引用したことに対し、同氏は「判決文を読めば、圧力を否定できない事実が認定されている」と指摘。各社が政治介入がなかったかのように報道した根拠として判決文の一部のみを誇張していることを挙げた。 
 
同氏は判決文の「原告らは政治家が本件番組に対して直接指示し介入したと主張するが、取材された際、政治家が…本件番組に関して具体的な示唆をしたとまでは認めるに足りない」との部分が1人歩きしているためとしている。しかし、「安倍氏が慰安婦問題に関する持論を展開、放送前に番組内の発言部分を政治団体が把握していた、NHK国会担当局長が1月29日に番組改変の指示を出している」ことなどを挙げ、政治圧力の存在は否定できないと強調した。また「海外メディアは昭和天皇の戦争責任と番組と結びつけているが、日本のメディアは従軍慰安婦問題とのみしてやんわりと紹介している。女性国際戦犯法廷に関する報道も削られている」と海外報道との落差も指摘した。 
 
原告団代理人の飯田正剛弁護士も「日本語の読解力があれば、政治圧力を否定する読み方はできない」と批判。多くのマスコミの「政治圧力はなかった」との報道を「誤報だ」と断定した。「判決文の一文だけを部分的に読んでマスコミが政治圧力がなかったと報道した。全体を読めば、間接的な圧力はあったと読める点をマスコミがこぞって無視していることは、判決全文を読めばわかる」と強調した。 
 
何がNHKを萎縮させたのか 
バウネット・ジャパンの西野共同代表は、NHKでの番組改変は過去にも同様の例が145件はあったと指摘。その例として、毎日新聞の西山太吉元記者の沖縄密約をめぐるスクープが最終的に女性書記官とのスキャンダル問題とされてしまったこと、03年の5月11日に放送予定だったイラク戦争をイラク側の視点から取り上げようとしたクローズアップ現代が、放送5日前に諸星理事により放映停止命令を受けたこと━などを挙げた。 
 
「なぜこのようなことが起きたかという原因と背景を見なければならない。安倍氏が視聴率の高くないこの番組に、そして慰安婦問題になぜ注目したのかを考えなければならない」と述べた。そして「国際法廷を肯定する表現、慰安婦に対する日本政府と日本軍の組織的な関与とその後の政府の対応や責任、慰安婦の存在をできるだけ消した」と糾弾。 
 
また、番組の内容改変は「慰安婦問題に否定的な政治家の、歴史事実を封殺しようとする政治圧力だ」と批判した。「今のテレビは慰安婦、戦争責任、フェミニズムをタブー扱いしている。戦争、加害の記録をめぐり報道現場に自粛がはびこっている。NHK番組改変の背後にあるメディアに萎縮効果を与えているものに注目すべきだ」と警鐘を鳴らした。 
 
現代の「白虹事件」 
ジャーナリストの斎藤貴男氏は、今回の番組改変問題を1918年の寺内内閣を批判した朝日新聞が、権力に潰された白虹事件になぞらえ、このままだと歴史の繰り返しになりかけないと懸念した。「広島・長崎といった被害の歴史だけでなく、バブルの後半から90年代にかけて加害責任が一般的に広まり、それが河野談話、村山談話につながっていった」とする一方、同時に不況、リストラの状況下で、加害責任なんて言っている場合じゃないという流れが広がった。米国と同盟して戦争加担していこうとする時に、加害責任で目覚められてもらっては困る」との政府の思惑の延長線上に番組改変問題が起きたと指摘した。 
 
さらに、「戦後、日本の対米追随の見返りとして米国市場が開放された。自衛隊は直接戦闘はしなかったが、日本企業が戦争でもうけていたことには変わりはなかった。このため政府は、目に見える形で加害責任を訴える力が国民に浸透していくのをおそれている」と語った。 
 
「期待権」と「編集の自由」 
一審判決では、NHKの番組改変が「編集の自由の範囲内」と認定された。今回の判決では、NHKに対し「編集権限を逸脱」したとし、「NHKの経営者だけでなく、デスク、部長、直接取材した記者、それぞれに編集権があるとされた」と小玉美意子武蔵大学社会学部教授は評価。さらに、「NHKは政治介入があったことをいさぎよく認めるべきだった」と求め、NHKの政治介入の否定が、政治家らに「自分たちは干渉していない」と言わせる要因になり、それがさらに視聴者を裏切る結果となっているとした。 
 
立正大学文学部講師の桂敬一氏は「完全な編集権の行使というのは、真実を伝える時にさまざまな協力者があってこそ成り立つものだ。協力者の位置付けを明確にしたことに今回の判決の意義がある。編集権は本来、国民の知る権利への奉仕に由来するもので、企業幹部の恣意に委ねられるものではないことが示された」と述べた。さらに、本田雅和、高田誠両記者による番組改変報道、長井睦プロデューサーの内部告発、その後の魚住昭氏の報道、永田浩三チーフ・プロデューサーの内部告発らによって、今回の判決がもたらされたとしている。 
 
大沼和子弁護士は、NHKが「編集のやり直しを繰り返したことを隠すために編集の自由を使った」と批判。本来の「編集の自由」とは、知る権利と報道の自由の根幹に関わる一番尊重されるべきものだとしている。今回の判決では「取材の対象者がそのような期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、番組制作者の編集の自由もそれに応じて一定の制約を受け、取材対象者の番組内容に対する期待と信頼が保護される」とした。 
 
そして、このケースでは「特段の事情あり」とされ、「期待権」が侵害されたことが認められた。また、「特段の事情があるときに限り、これを説明する法的な義務を負うと解するのが相当である」と「特段の事情」を認めた上で、NHKが説明義務を怠ったことについて不作為行為を認めた。 
 
判決で「期待権が侵害」されたことが、報道を萎縮させるのではないかという各メディアの論調について、板垣氏は「どのメディアも、不思議なほど『萎縮』という言葉を使っている」としながら、次のように指摘した。すなわち、「取材対象者と実際に番組を作ってきた制作現場、そして政治家と幹部、この2つに分けて考える必要がある」「松尾総局長ら実際に制作現場には関与しない人間が、政治家の意図を忖度し現場に関わり、その結果、制作現場の方針を離れた形で編集されたために、『編集権の濫用、又は逸脱』という判決に至った」「期待権と編集の自由を単純に天秤にかけているわけではない」。桂氏はこうした「期待権」「特段の事情」というのは曖昧だと指摘し、「期待権に対して行使するよりも、実質的な損害を与えたことにたいして補償すべきであった」としている。 
 
メディアの責任 
今回のシンポジウムには、当事者である元DJディレクターの坂上香氏も参加。DJは編集の途中で、番組を降りる希望を述べたものの、その権利は全く認められなかった。坂上さんは、「DJも被害者」としつつ、逸脱した制作過程を見過ごせず、「被告側でありながら原告側に立つことは当然の決断だった」と胸のうちを明かした。さらに、「ヒエラルキーの最低辺にいて、番組を降りる権利がないにしても、自分たちが作った番組が非常に影響力があるということを感じた」と語った。 
 
そしてマスメディア関係者に向け、「メディア関係者には、トップであれ末端であれ、どんな立場の人も、放送が多くの人の思いを砕き、傷つけ、存在を『消す』ことさえできるということを念頭に置き、重大な責任を負っていることを認識してほしい」と訴えた。 

Thursday, May 24, 2007

NHKは「敗訴」に襟を正せ 番組改編訴訟の東京高裁判決

NHKは「敗訴」に襟を正せ 番組改編訴訟の東京高裁判決 池田龍夫(ジャーナリスト) 

従軍慰安婦問題を取り上げたNHKテレビ「女性国際戦犯法廷」の番組内容改編をめぐる訴訟は、東京地裁に続き東京高裁で審理が続いていたが、1月29日、画期的な判決が下された。南敏文裁判長は、NHK幹部が放映前に安倍晋三氏(当時、官房副長官)らと面談した事実を示し、「政府・与党側の発言を必要以上に重く受け止め、NHKはその意図を忖度して番組を改編した」と初めて認定、NHKとNHKエンタープライズ、ドキュメンタリー・ジャパン(取材・制作会社)3社に200万円の賠償支払いを命じた。トラブルとなった背景を整理したうえで本訴訟の問題点を探っていきたい。  

▽裁判の経緯   
原告の市民団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク『バウネット』が2000年12月開催した「女性国際戦犯法廷」を、NHK教育テレビが01年1月30日流した放映内容に対する〝政治介入〟が発端。それから約4年経過した05年1月12日、朝日新聞朝刊が「政治の放送への介入」と報じて大問題になった。   

そもそもNHKは、予算執行に国会承認が必要な公共放送のため政治権力の介入を受けやすいメディアで、「国会議員への説明」と称する業務報告が慣例化していた。中でも、今回の騒動は慰安婦問題だけに深刻であり、自民党国会議員が複数介在し、その中心的存在が安倍晋三、中川昭一両議員だった。「新しい歴史教科書を考える会」を支援する若手国会議員が「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を結成、慰安婦番組放映の頃は中川議員が同会会長、安倍議員が事務局長を務めていた。  

「朝日vsNHK」がメディア界を揺さぶる事件に拡大したことは記憶に新しいが、〝政治介入〟のキーマンが、現在の実力者・安倍、中川両氏だった点に、今回の高裁判決の意義と重大性を特に感じるのである。  

▽判決理由のポイント   
「女性国際戦犯法廷」を主催したバウネットが提訴したのは、NHK側が放映直前に一方的に番組内容を改編し、バウネット側の「期待権」を踏みにじったからだ。1審の東京地裁は被告3社のうち孫請け制作会社の責任だけを認めたが、2審の東京高裁では「NHKと政治家の関係」を重視し、被告3社の責任を厳しく断じて損害賠償を命じた。その「判決理由」の中から、興味ある事実を指摘している個所を一部引用して参考に供したい。   

[国会議員等との接触等]  
01年1月25~26日ころ、担当者らは自民党の複数の国会議員を訪れた際、女性法廷を特集した番組を作るという話を聞いたがどうなっているのかという質問を受け、その説明をするようにとの示唆を与えられた。  

26日ごろ、NHKの担当部長が安倍官房副長官(当時)と面談の約束を取り付け、29日、松尾武放送総局長らが面会。安倍氏は、いわゆる従軍慰安婦問題について持論を展開した後、NHKが求められている公正中立の立場で放送すべきではないかと指摘した。   

[バウネット側の期待と信頼に対する侵害行為] 
放送された番組は加害兵士の証言、判決の説明などが削除されたため、女性法廷の主催者、趣旨などを認識できず、素材として扱われているにすぎないと認められ、ドキュメンタリー番組などとは相当乖離している。バウネット側の期待と信頼に反するものだった。   

01年1月24日の段階の番組内容は、バウネット側の期待と信頼を維持するものとなっていた。しかし、同月26日に普段番組制作に立ち会うことが予想されていない松尾総局長、野島直樹国会担当局長が立ち会って試写が行われ、その意見が反映された形で1回目の修正がされた。さらに修正版について現場担当者を外して松尾、野島両氏と伊東律子番組制作局長、吉岡民夫教養番組部部長のみで協議し、その指示でほぼ完成した番組になった。放送当日の30日に松尾放送総局長から「旧日本軍兵士と元慰安婦の証言部分の削除」が指示され、3分に相当する部分を削除して40分版の番組を完成されたことなどを考慮すると、同月26日以降、番組は制作に携わる者の制作方針を離れた形で編集されていったと認められる。   

そのような経緯をたどった理由を検討する。本件番組に対して、番組放送前にもかかわらず、右翼団体などから抗議など多方面からの関心が寄せられてNHKとしては敏感になっていた。折しもNHKの予算につき国会での承認を得るために各方面への説明を必要とする時期と重なり、NHKの予算担当者や幹部は神経をとがらせていたところ、番組が予算編成などに影響がないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾総局長や野島局長が国会議員との接触を図った。その際、相手方から番組作りは公正・中立であるようにとの発言がなされたというもので、時期や発言内容に照らすと松尾総局長らが相手方の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度してできるだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、直接指示、修正を繰り返して改編が行われたものと認められる。   

なお、原告らは政治家などが番組などに対して指示をし介入したと主張するが、面談の際、政治家が一般論として述べた以上に番組に関して具体的な話や示唆をしたことまでは、証人らの証言によって認めるに足りない。   

バウネット側は、中川昭一議員が事前にNHKに対し放送中止を求めたと主張し、同議員はフジテレビ番組でアナウンサーの質問に対し、放送法に基づき公正に行うべきことをNHKに申し入れたと発言するなど、事前のNHK担当者との接触をうかがわせる発言をしている。しかし、同議員はこのインタビューでは01年2月2日に会ったことを明言しており、同議員が番組放送前にNHK担当者に番組について意見を述べたことを認めることは困難だ。   

[説明義務違反と不法行為]  番組制作者や取材者は特段の事情がある時に限り、内容や変更を取材対象者に説明する義務を負う。本件では、NHKは憲法で保障された編集の権限を乱用または逸脱して変更を行ったもので、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しく、原告らに対する説明義務を認めてもNHKの報道の自由を侵害したことにはならない。被告が説明義務を果たさなかった結果、原告は番組からの離脱や善処申し入れの手段を取れなくなり、法的利益を侵害された。   

NHKは番組改編を実際に決定して行い、放送したことから、原告の期待と信頼を侵害した不法行為責任を負い、説明義務を怠った責任も負う。NHKは制作担当者の方針を離れてまで国会議員の意向を忖度して改編し、責任が重大であることは明らかである。  

▽NHKは判決をどう報じたか   
NHK幹部が、国会議員らから有形無形の〝圧力〟を受け、番組改編に狂奔した経緯をリアルにたどった「判決理由」との思いを深めた。それだけに、「NHKと政治家の関係」に厳しく踏み込んだ意義は大きく、マスコミ報道に警鐘を鳴らす司法判断だった。NHKは、被告の立場を超えて東京高裁判決を真摯に受け止め、社内体制を改革して「報道の自由を守る」決意を表明すべきだったが、不名誉な高裁判決を報じたニュース(1・29夕)の冷淡な姿勢に驚いた。「即上告」を表明した当日のニュース全文を読んでいただきたい。  

[NHKが判決直後に流したニュース]  
6年前にNHKが放送した番組をめぐって、取材を受けた団体が「事前の説明と異なる不本意な番組を放送された」と訴えた裁判で、東京高等裁判所は「NHKの当時の幹部が、国会議員などの考えを、必要以上に受け止めて、番組を編集し直した結果、取材相手の期待に反した」と指摘して、NHKに200万円の賠償を命じました。  

この裁判は、平成13年にNHKが教育テレビで放送した「戦争をどう裁くか」というシリーズの番組をめぐって、民間の団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが「事前の説明と異なる不本意な番組を放送された」として、NHKや番組制作会社などに損害賠償を求めたもので、1審は「編集の自由の範囲内だ」として、NHKへの訴えは退けました。しかし、東京高等裁判所の南敏文裁判長は「番組編集の自由は、憲法上尊重すべき権利で、不当に制限されてはならないが、今回の番組は、取材を受けた団体への事前の説明とかけ離れたものになって、期待と信頼に反した。放送前に十分な説明もしていなかった」と指摘しました。そして「国会議員が具体的に番組に介入したとは認められない」と述べました。しかし、「NHKの当時の幹部が、国会議員から一般論として公正・中立にと言われたことなどを、必要以上に重く受け止め、その考えを推し量って、番組を編集し直すよう指示したもので、編集権を乱用した責任は重い」と判断し、NHKに200万円の賠償を命じました。  

判決について「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの西野瑠美子代表は「全面勝訴と言って良い内容で、NHKは判決に真摯に向き合ってほしい」と話しました。また、原告側の弁護士は「判決は編集権が憲法に保障されていると指摘する一方で、編集権は絶対的なものではなく、例外があると認めた画期的なものだ」としています。一方、判決についてNHKは「不当な判決であり 直ちに上告した。今回の番組の編集は、政治的に公平であることや、意見が対立している問題について、多くの論点を明らかにするという放送法の趣旨に則って行った。判決は、番組編集の自由を極度に制約するもので、到底受け入れられない」としています。   

精緻な「判決理由」に比べ、被告NHKの〝他人事〟のような広報(ニュース)はひど過ぎないか。「不当な判決であり、直ちに上告した」と〝宣言〟した姿勢に、NHKの恐るべき体質を感じ取った視聴者は少なくなかったと思う。  

▽安倍首相の自己弁護発言  
[『政治家不介入、明確に』と安倍首相]=1・29夜の会見  
政治家が介入していないという判決が明確に下された。向こう側(NHK)が会いたいと言ってきて、私はいつ放送するかも知らなかった。報道の自由を政治家は常に頭に入れなければならないが、「NHKに圧力をかけた」と言いながら(それが)間違っていたのだから、「間違っていた」と認めるのが、私は報道機関ではないかなと思います。(注=『朝日』批判)   

〝灰色〟とはいえ、「NHKへの政治圧力」の一端が東京高裁判決で明らかにされたことは否定できまい。ところが、南裁判長が指摘した「NHKと政治家の関係」を真摯に受け止めず、「介入圧力がなかったことが証明された」と、胸を張って記者団に語る安倍首相には、判決の重大な意味を解する能力もないのだろうか。〝視野狭窄〟が怖ろしい。  

今こそ、〝自己弁護〟〝自己防衛〟に汲々としている為政者の責任追及とともに 言論機関の姿勢を鮮明にすべきだと思う。  ▽「期待権」をめぐって…   

今回の東京地裁判決で、「期待権」を条件付きで認めた点が注目されている。「将来一定の法律上の利益を受けられることを希望したり期待したりできる権利で、その権利が不法に侵害された場合に損害賠償が認められる」というが、その適用基準はまだ未整備のようだ。  

今回の判決理由の中では「番組制作者の編集の自由と、取材者の自己決定権の関係は、取材者と取材対象者の関係を全体的に考慮して、取材者の言動などにより取材対象者が期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、編集の自由も一定の制約を受け、取材対象者の番組内容に対する期待と信頼が法的に保護されるべきだ。ドキュメンタリージャパン(DJ)の担当者の提案表の写しを交付して説明した行為、バウネットとの協力などにかんがみれば、バウネット側が、番組は女性法廷を中心的に紹介し、法廷の冒頭から判決までを概観できるドキュメンタリー番組かそれに準ずるような内容となるとの期待と信頼を抱いたと認められる」として、「期待権」を法的権利と認めたのである。   

この権利を侵害すれば不法行為となるが、判決理由で述べた「特段の事情が認められるとき」の判断基準が必ずしも明快でない気がする。飯田正剛・原告弁護団長が「政治家らが『期待権』を理由に取材・報道に介入してくる恐れはないか」との質問に対し、「両刃の側面、リスクがあるので、我々も『特段の事情』で(期待権が認められる)要件を絞る形で悪用を招かないよう注意してきた。判決も(期待権と報道の自由の)バランスを図りながら、ぎりぎりのところで法的救済を図った」と述べていた(毎日1.30朝刊)が、参考になる指摘である。  

新聞各紙が「期待権」拡大解釈への懸念を表明していることは理解できるものの、「報道機関が真実追究の姿勢を堅持すれば、取材先と〝敵対関係〟になるはずがない」との毅然たる姿勢を持つことが先決と考える。NHKの番組改編も然ることながら、関西テレビの捏造番組を見せつけられては、視聴者がメディア不信に陥るのは当然なことだ。今回の東京高裁判決で指摘された「NHKによる期待権侵害や説明義務違反」は第一義的に、ジャーナリズムの倫理問題と受け止めるべきで、報道機関が襟を正すことこそ急務である。  

▽判決に対する有識者の論評   
NHK問題をめぐって論じてきたが、各新聞が掲載した有識者の論評を幾つか紹介しておきたい。  

▼今回問題になった番組に出演し、改ざんを指摘してきた高橋哲哉・東大教授(哲学) 1審判決は、番組改編の責任が制作会社だけに推しつけられた奇妙な内容だったが、今回はNHK側が改編の主導権を果たしたと認められたので、その点は評価できる。NHK幹部は安倍晋三氏ら政治家の発言の意図を忖度し、編集権を乱用して制作現場に改編を迫った自主規制のもと、ジャーナリズムに照らして無残な番組を放映したことを厳しく受け止め、反省すべきだ。一方で政治家の発言が番組制作への介入、圧力になると認められなかったのは残念。もっと踏み込んでほしかった。 
 
▼堀部政男・中央大法科大学院教授(情報法)  判決が、編集の自由を憲法上尊重されるべき権利とした点は重要だ。その上で、ニュース番組とドキュメンタリー番組を区別し、後者の場合、特段の事情があれば一定の制約を受けるとした。ただ、ドキュメンタリーでも取材対象者の意向を尊重しすぎると、結果的に編集の自由を制限することになりかねず、慎重な取り扱いが必要だ。  

▼服部孝章・立大教授(メディア法)  放送法は「放送事業者は番組編集に当たり、政治的に公平であること」と定めている。しかし、NHKは予算への影響を意識して、国会議員に接触し、その発言に過剰反応して番組を改編した。その一方、取材対象者には必要な説明を怠ってきた。報道機関として、公正さや誠実さに欠ける行為で、判決がその点を明確に指摘した点は評価できる。  

▼桂敬一・立正大講師(ジャーナリズム論)  NHKの言い訳を認めた1審判決に対し、政治家に迎合して番組を改編したNHK本体の責任を認めた当然の判決。朝日新聞が「政治家の介入があった」と報じた後、問題を単なる「朝日対NHK」の構図に矮小化してしまった。しかし、控訴審判決は、メディアの独立性という最大の論点をあいまいにしてきた同業者の姿勢も裁いた、と言える。報道各社は、NHKと朝日新聞社のジャーナリズムの在り方が正しかったのか、再点検してほしい。  

▼吉岡忍氏(作家)  NHK本体の責任を重く見たのは当然だ。ドキュメンタリーは取材相手との信頼関係の上で作っていくもので、内容を変更するなら、途中で説明すべきだったことを知っていたはずで、無理に「編集権」を主張すべきではなかった。番組改編への政治家の介入については、NHK側も政治家側も裁判の経過でやり取りを明らかにしていない以上、判決で認定されなかったのはやむを得ない。本来なら政治家と会ったNHK幹部に、政治家が何を言ったのか、明らかにしてもらいたかった。メディアとしては、政治家の意向で番組を改編したという疑いを持たれただけでダメージが大きい。  

▼右崎正博・独協大法科大学院教授(憲法)  メディアは、当初伝えた趣旨に変更があった場合には取材相手に知らせ、再取材するなど対応が求められていることを認識すべきで、「期待権」を認めたのは妥当だ。ただ、取材対象が政治家などの公人の場合は免責される部分も多いだろうし、取材相手の期待が過度な場合もある。個別に判断すべきだ。  ▼津田正夫・立命館大教授(市民メディア論)  市民感覚から言えば、「期待権」は当然ある。普通の市民は、政治家やジャーナリストと違って公に発言する機会は少ないので、取材される側として説明を求めたり内容に期待したりするのは当然の防衛策だ。だからといって「期待権」がいつでも発生するとなると、政治家などに悪用される恐れもある。  

▼川上和久・明治学院大教授(政治心理学)  「期待権」が認められたのは、公共放送だからこそ取材する素材には慎重になるべきだ、と裁判所が警鐘を鳴らした特殊なケースだろう。疑惑について取材を受けた企業などから「自分たちの言い分どおりに編集しろ」といわれるような問題に波及してしまうと、言論の自由を脅かす恐れがある。  

▼原寿雄氏(元共同通信編集主幹)  説明責任を果たすべき立場の政治家や官僚など公人に対する取材にもこの理屈(期待権)が認められると、真実を追究するための取材に支障が出る恐れがある。

放送法改正案:あす審議入り 政府介入で萎縮、懸念--広瀬道貞・民放連会長に聞く

◇国会に呼ばれたら反対表明
放送番組の内容に対する新たな行政処分を盛り込んだ放送法改正案が22日、衆院本会議で審議入りする。法案は、放送介入との批判が強い。日本民間放送連盟(民放連)会長を務める広瀬道貞・テレビ朝日会長は毎日新聞のインタビューに応じ、「国会審議に呼ばれれば、反対を表明するつもりだ」と明言した。総務省が、放送局に対して行政指導する際の放送法の根拠条文の範囲を広げている動きと併せて報告する。【臺宏士】

--放送法改正案の問題点は何でしょうか。
◆広瀬氏 本来、自由であるべきメディアの表現の自由が阻害されかねない。あいまいな表現が多く、あらゆる放送番組に総務大臣が介入し得る道を開く。法解釈を政府が決めて関与すると放送事業全体が萎縮(いしゅく)する。

--具体的にはどんな影響がありますか。
◆広瀬氏 政治問題に口を挟まれれば、民主主義を阻む。エンターテインメントならば、制作者らの創意工夫を萎縮させ、お茶の間の楽しみを奪う。政府の関与はできるだけ避けるべきで、番組に注文があるのであれば、放送事業者がつくる仕組みに委ねるべきだと主張してきた。報道が真実かどうかはメディア同士の取材合戦などによって担保されるべきだ。公権力によって確保されるものではない。

--菅義偉総務相は、放送界の第三者機関である「放送倫理・番組向上機構」(BPO)が機能している間は権限を発動しない、「抜かずの宝刀」だと言っています。
◆広瀬氏 大臣が代われば、解釈が変わることもあり得る。抜かずの宝刀ならば、何らかの形で法案に明記すべきだ。法案に書かれれば、大半の問題は解決されると思う。言葉だけでは到底、受け入れられない。国会審議で参考人として呼ばれれば、法案に反対の意見を述べたいと思う。

--BPO内に番組内容を調査する放送倫理検証委員会が発足し、会長は、「出直し的な改革」を打ち出しました。
◆広瀬氏 この1年だけをみても、おわびに至るケースがどの局も多かった。情報系のバラエティー番組が増え、バラエティーだから表現も相当許容されるという意識があったかもしれない。情報系と売り出す以上、きちっとしなければならなかった。脇が甘かった。民放連では、特定の番組が放送界全体の信頼を傷つけることに対して議論する場所がなかった。関西テレビによる番組ねつ造は起こるべくして起きた。ここで対応しなければ放送界の将来はない。

--総務省は、行政指導する根拠条文を拡大しています。
◆広瀬氏 番組に対する評価が視聴者と放送事業者との間で開きがあると、政府は口を出したくなるのだろう。放送法の規定は抽象的で線引きが難しいが、疑わしきものは調査していく。BPOがうまく機能し、権威あるものになれば、その対応を待とうということになるだろう。総務省は、何かあると放送法を盾に呼びつけてきたが、もう控えてほしい。名誉を回復する番組を放送するなどして決着したことに対して、さらに行政指導するのはおかしなことだ。

--放送行政は総務大臣ではなく、独立行政委員会が所管すべきだという意見があります。
◆広瀬氏 独立行政委員会なら放送内容に多少厳しいことを言ってもよいというものではない。番組内容についてはBPO的な組織に任せるのが最も進んだ知恵だ。

◇「放送法3条の3」、根拠条文を拡大--事業者へ行政指導、急増
総務省は、90年代半ばから政治的公平などを定めた「放送法3条の2」を根拠に番組への行政指導を強めてきた。番組基準を定めることを規定した「放送法3条の3」に違反したことを理由に放送事業者に厳重注意や警告などの行政指導をした件数は、03年度、04年度は各1件だった。06年度に6件に急増。07年度は早くも3件を数える。

昨年8月のTBSのケースでは、旧日本軍の「731部隊」を取り上げた報道番組で、記者が社内で電話取材している様子を撮影した際に、安倍晋三官房長官(当時)らの写真パネルが映った。TBSは、自社の放送基準の中で民放連の放送基準を準用することを規定。同基準には「名誉を傷つけないようにする」とある。同省は「チェック体制に遺漏があった」とし、厳重注意した。

また、TBSは今年1月、情報番組で、不二家の衛生管理について10年以上前の従業員の証言をもとに「期限切れのチョコレートを溶かして牛乳と混ぜていた」などと報じた。TBSは「牛乳のような何か、との証言を断定したのは誤りだった」として、4月に番組内で「誤解を招きかねない内容だった」と謝罪した。

同省は「事実を意図的に曲げたものではないが、若干の過剰な演出があった」として厳重注意した。行政指導が増えている点について、同省は「適用基準を変えて厳しく対応しているわけではない」とコメントする。

同じようなケースでも、自社基準が存在しなければ、総務省は行政指導を見送っている。昨年、1秒間に3回を超えて光を点滅させる映像手法を使った通販番組に関して、同省は、民放や衛星放送事業者については、民放連が作っているガイドラインなどに抵触したとして注意した。ところが、同じ番組を放送したCATV事業者には行政指導しなかった。業界にガイドラインがなかったためだ。

ガイドラインを作って対応している事業者の方が、それを根拠に行政指導を受けるちぐはぐな実態には、専門家の間にも批判が出た。これに対し、同省は、ガイドラインの作成を日本ケーブルテレビ連盟に要請。既に作成されており、指導を強める姿勢だ。

◇威嚇範囲が広い--清水英夫・青山学院大名誉教授の話
「放送法3条の2」は、倫理規定だというのが旧郵政省の認識だった。このため、同条を根拠にした警告や厳重注意などの行政指導は控えてきた。倫理規定ゆえに学説でも合憲派が多数で、かろうじて違憲性を免れていた。

番組基準を定めることを求めた「3条の3」に基づいた行政指導ができないというのは言わずもがなで、議論さえされてこなかった。だからこそ、事細かく書き込んであるが、これを基にした行政指導は「3条の2」と比べ、ずっと威嚇できる範囲が広く、問題だ。

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 ◆行政指導・関係条文
 ◇放送法3条の2
 放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 1 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 2 政治的に公平であること。
 3 報道は事実をまげないですること。
 4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
 ◇放送法3条の3
 放送事業者は、放送番組の種別及び放送の対象とする者に応じて放送番組の編集の基準(以下「番組基準」という。)を定め、これに従って放送番組の編集をしなければならない。
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 ◆「放送法3条の3」に基づき行政指導した事例◆
04年3月 日本テレビ「踊る!さんま御殿!」「マネーの虎」(厳重注意)
05年3月 日本テレビ「カミングダウト」(同)
06年6月 TBS「ぴーかんバディ!」(警告)▽NHK「スーパーライブ」(厳重注意)▽テレビ東京「セサミストリート」など(同)▽岐阜放送「通販番組」「CM」(同)▽民放76社「通販番組」「CM」(注意)
   7月 衛星放送事業者26社「通販番組」(注意)
   8月 TBS「イブニング・ファイブ」(厳重注意)
07年2月 ジュピターサテライト放送「通販番組」(注意)▽インタラクティーヴィ「同」(同)
   3月 関西テレビ「発掘!あるある大事典2」(警告)
   4月 テレビ信州「ゆうがたGet!」(口頭注意)▽テレビ東京「今年こそキレイになってやる!正月太り解消大作戦」(口頭注意)▽TBS「人間!これでいいのだ」「みのもんたの朝ズバッ!」(厳重注意)
毎日新聞 2007年5月21日 東京朝刊

Tuesday, May 08, 2007

メディアは変わるか<下> 放送と通信の融合加速

楽天が四月、TBS株の買い増しを表明し、両社の間で緊張が再び高まっている。楽天がTBSに急接近する背景には、株価を上げる一方、デジタルビジネスを広げていく狙いもありそうだ。放送と通信の融合が世界的な広がりを見せる中、楽天は今、何をしようとしているのか。慶応大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC)の中村伊知哉教授に聞いた。(小田克也)

――楽天がTBSに攻勢を強めているが。

「楽天が二〇〇五年にTBSの株を持ちだしたころから、放送と通信の融合はかなり進んだ。今回の楽天の動きは株価を上げるだけでなく、ビジネスをつくろうとしているのかもしれない」
 
――楽天は危機感を持っているのか。
 
「デジタルビジネスの動きは速い。放っておけば海外の動きにのみ込まれる。そんな危機感があるのでは」
 
――海外にのみ込まれるとは。
 
「ここ一、二年、米国では動画投稿サイトのユーチューブはじめ、アマゾンやグーグルが盛んにビジネス展開し、日本でも価格コムやアットコスメが出てきた。いわゆるネット利用者の参加型ビジネスだ。これに楽天がどう取り組んでいくかが一つのポイント。もう一つは、本筋である放送と通信の融合がかなり進んでいることだ」

――楽天にとってユーチューブは脅威か。
 
「ユーチューブは一種の広告市場になっている。ユーチューブで『松坂』と検索すると、米大リーグ・レッドソックスの松坂大輔投手の試合のテレビ放送を、誰かがクリップして送ってきている。日本のドラマやアニメなども見られる。僕がスポンサーなら、日本のテレビ局に何十億円の広告料を払うより、ユーチューブに出すだろう」

――楽天は、ユーチューブなどと競争し、広告を取らないといけない。

「そういうことだ。昨年の日本の広告費は、インターネットが三千六百億円で、雑誌とほぼ並んだ。新聞一兆円、テレビ二兆円市場を抜くのは五年後、七年後などといわれる。それくらい差し迫っている。どうやって広告を取るか。楽天の危機感は強いはずだ」

――放送と通信の融合をめぐる動きは活発なのか。

「すごく動いている。昨年一月、場面が変わった。ヤフーやグーグル、アップルコンピュータ、マイクロソフトなどが一斉に映像配信ビジネスをやると宣言した。それまで融合の主役は、通信会社のAT&Tとかメディア企業のタイムワーナーだったが、ITの会社になった」

――日本は遅れていると。

「楽天、TBSとかライブドア、フジテレビとか動きは出てきたが、本格的なビジネスとして立ち上がっていない。政府は著作権の問題を片付けようとか議論しているが、ビジネスモデルをつくれていない。だから民間は焦らざるを得ない」

――厳しい競争の中で楽天は、まずTBSの番組などのコンテンツを押さえようとしている。

「最初はそうだったと思うが、それがベストな戦法なのかどうか。というのも、ユーチューブのような新しいビジネスが出てきており、楽天のサイトでTBSのコンテンツをそのまま流しても商売になりにくい。だから一緒にコンテンツをつくろうとしているのでは」

――例えば楽天のサイトでTBSドラマのアニメ版をやるとか。他のサイトで見られないコンテンツを流せば利用者は喜ぶはずだ。

「そうだ。楽天がその具体的なメリットをTBSに示せれば、TBSも乗ってくると思う。だが多分、それはみんな、つくれていない。世界的にも放送局と通信会社が組んでうまくいった事例はまだない」

――そもそも、TBSに接近する楽天の戦略は妥当なのか。

「米国ではCBSもNBCもコンテンツを持っていない。持っているのはハリウッドの映画会社だったりする。日本の場合はテレビ局に集中しており、テレビと何かやろうするのは手法として間違っていないと思う」

メディアは変わるか<中> 公共放送の再生へ

一連の不祥事を受けて改革を進めるNHK。その一環として昨年九月には、トヨタ自動車から金田新・専務をNHK理事に迎えた。経営の手本といわれるトヨタの気風を取り入れて体質改善を進めたいところだが、“官僚的”などとやゆされるNHKは、金田氏の目にどのように映ったのだろう。理事就任から半年余を振り返りながら問題点を語ってもらった。 (小田克也)
 
――NHKにおける自らの役割は。
「僕はNHKの人間ではない。職員と同じことを言えても貢献できない。違うことを言うのが役目だ。『和して同ぜず』というところかな」

――局内で日々、感じていることは。

「トヨタには『現地現物』という言葉がある。『現地で現物を見て判断しなさい。紙の上で判断していたら間違う』という意味だ。だから僕も三分間でもいいから番組を作らせて、と頼んでいるのだが…。抽象論で『公共を担う』と言っても何も分からない」
 
――NHKは不祥事が相次いだ。

「制度疲労があったのは事実。直さないといけない。制度だけでなく、人を動かす情念みたいなものも経営が責任を負うべきだ」
 
――職員をしっかり教育すべきだと…。
 
「成功体験を積み重ねることだ。日本人はほめられて伸びる人が多い」

――NHKが改善していくべきところは。

「新陳代謝はもっとしたほうがいい。若干、ゴムが伸びきった感じがする。疲弊しているというか…。一九八〇年当時は、関連団体を含めて一万八千四百人の規模だった。それでテレビは一週間当たり百七十一時間を送出していた。ところが今は一万七千百人ちょっと。それで昨年は六百五十時間もこなしている。どうやって力をためて番組制作に持っていくかだ」

――NHKを取り巻く環境も変わってきているのか。

「国際環境が激変している。一九八九年にベルリンの壁が落ち、一気に市場経済が出てきた。それは現在進行形で、その中でCNNはグローバル発信し、フランス24は、オピニオンリーダーのための放送だと言っている。一方、アルジャジーラはアラブの見方を提供し、中国中央テレビ(CCTV)もある。このように発信しだしているのは、国際社会の潮流の変化と無関係ではない」

――インターネットも普及している。

「技術の変化は大きい。若い人はユーチューブ(米国の動画投稿サイト)を見ている。映像も質が悪く、短いが、若い人は結構楽しんでいる。こういう環境変化の中で公共放送を担うことの意味も変わってきていると思う」

――NHKは大きく変わる環境にどう対応すればいいのか。トヨタに見習うところは。

「トヨタは創業理念について、大いに発言している。英訳もしており、一つの宗教のように外国に行って話している。自分の思うことを発信しようとする意欲、その結果についての自己責任、それは強烈なものがある」

――そのへんがNHKには足りない。

「法律がガバナンス(企業統治)を決めているという意味で、NHKは日銀と同じ。ただ法律を人から与えられたものでなく、自分のものにして、活性化し、発信していくことはできる。NHKは放送するのだから、まさに発信そのもの。放送記念日の特集番組など最近は、だいぶやっているが…」

――自らの仕事で、今後の課題は。

「声なき声を含め、視聴者がNHKに何を問いかけているか。それをまとめられないか、と考えている」

――声なき声をつかまえるのは難しいと思うが。

「でも革新的とは、そういうものだ。例えばiPod(アイポッド)なんかそうだ。『こういうものをつくってほしい』と言った人はいない。『こういうものがほしかった』と多くの人が言ったわけで、NHKが、そうした革新の担い手として、視聴者の期待に応えられれば、と思う」

メディアは変わるか<上>番組不祥事の防止へ 外部から人材登用を

今年に入り、放送界は情報番組「発掘!あるある大事典2」の捏造(ねつぞう)問題で大きく揺れた。また一連の不祥事を受けてNHKの改革も進んでいる。一方、四月には楽天がTBS株の買い増しを表明するなど「放送と通信の融合」も再びクローズアップされている。こうした動きを受けてメディアは変わっていくのだろうか、放送や通信の専門家に話を聞きながら考えてみたい。初回は、英国放送協会(BBC)に勤務した経験のある慶大法学部講師の原麻里子さんに、日本のテレビ局の現状をどう見ているか聞いた。(小田克也)

――「あるある~」のような問題はイギリスの放送界でも起きたことがあるのか。

「聞いたことがない。BBCは、番組の捏造などが起きにくい放送体制といえる。例えば報道番組。日本ではアナウンサーがニュースを読むことが多い。だがBBCでは、記者リポートがほとんどで、画面上も取材者が明らかになる。他のスタッフが関係することによる情報の誤りや捏造などの防止につながっているのではないか」

――BBCはコンプライアンス(法令順守)や内部統制も強化しているのか。

「日本では、大半の放送局が、編集ガイドラインを公表していない。だがBBCは、編集ガイドラインなどが公開され、インターネットで読める。規定を公表するのは、情報公開に加えて、自らの立場を守る意味もある。つまり何か起きたとき『規定には、こう定められている。それを自分たちは破っていない』と主張できる」

――BBCのガイドラインの特徴は。

「イラク戦争のときの情報操作疑惑報道の一件(注)で厳しくなった。速さより正確さが大事で、CNNに後れを取ってもいいじゃないか、と…。また、正当性を証明するため、取材時の録音の徹底もうたっている」

――日本とイギリスでは、テレビ局の組織体制も違うのか。

「BBCの現会長は、民放トップを務めたこともあり、BBC一筋ではない。つまり組織の中で、人が頻繁に入れ替わる。例えば、NPO法人にいて、アフリカで働いていた二十七歳の人が入局してくるとか…」

――日本の場合、テレビ局の政治部長や社会部長は多くが生え抜きだ。こうした部長クラスも他社から来るのか。

「そう。BBCには有名な雑誌『エコノミスト』や新聞社、そして民放からもくる。人が入れ替わるので、組織の腐敗、ひいては不祥事が起きにくい。職員は職場を変わるので、日本のように組織をかばうこともない」

――日本のテレビ局の改善すべきところは。

「中途採用を増やし、不祥事を隠しにくい体質にすべきだ。それから放送局の仕事は、海外に製品を輸出するメーカーなどと違って、もっぱら国内向けだ。外部の価値観を身につけにくい。だから複数の放送局が合同研修を行うなど、なるべく外に出る機会を増やすべきだ」

――話を伺っていて日本のテレビ局とBBCは、かなり違う印象を受けたが。

「放送うんぬんの前に、文化の違い、特に教育の差がある。例えば大学生のエッセー(リポート)でも、日本は出典などの表記があいまいだが、イギリスでは、どの文献から引用したか、きっちり書くよう教え込まれる。つまり引用や参照について、厳しい教育を受けており、放送局に入る前に、捏造などを起こしにくい人間になっているといえるかもしれない」

はら・まりこ 慶応大学文学部卒。テレビ朝日にアナウンサーで入社。1988年、BBCワールド・サービスに派遣され、日本語部プロデューサー(在ロンドン)を3年間担当。帰国後はテレ朝で報道局ディレクターを務める。同局退社後、イギリスのケンブリッジ大学大学院に留学。専門は社会人類学。東京都出身。

ネット革命が促す世界のメディア再編

日本経済新聞20070509

カナダの金融情報サービス大手、トムソンが英ロイターと経営統合交渉に入り、米ニューズ・コーポレーションが米ダウ・ジョーンズ買収を提案するなど、欧米メディア業界で新たな再編の動きが広がっている。米国では先月、不動産を本業とする富豪による新聞グループ大手トリビューン買収が決まったばかりだ。 

再編の動きの背景には、グーグルなどインターネット企業が台頭する一方で新聞や放送といった既存メディアの販売・広告収入が低迷しているという構造変化がある。既存メディアの収益力低下や株価の低迷が新たな再編の引き金になっている。ロサンゼルス・タイムズなどトリビューン傘下の日刊紙や、ダウ・ジョーンズが発行するウォールストリート・ジャーナルなど、新聞の部数減少は米欧で特に目立つ。一方、高速通信インフラの普及などにつれてインターネット広告の市場は拡大している。金融情報サービスも家庭向けに展開できるようになり、トムソンがロイター買収を狙うのは、この分野でトップのブルームバーグを追い抜くためだといわれる。 

新しいメディアや広告媒体として台頭したインターネット企業間の競争も激しい。米マイクロソフトと米ヤフーの提携交渉も先週、表面化した。マイクロソフトのネットサービス「MSN」は赤字、老舗のヤフーも昨年から減益が続き、グーグルへの対抗策を迫られていたからだ。 新旧合わせたメディア企業の世界的な再編のうねりはさらに続くだろう。メディアの再編と変貌(へんぼう)は、技術革新に伴う企業の消長という視点だけでなく、民主主義の基盤としてのメディアの独立性や情報の質という視点からも、広く社会全体で考えるべきテーマである。 

企業再編では収益性を優先しがちだが、メディアの重要な課題は言論・報道機関としての独立性、安定性をどう確保するかだ。ダウ・ジョーンズではオーナー家が大きな議決権を持ち、ロイターでは「発起人会社」の承認を必要とするなど、買収防止策を講じてきた。それは既得権を守る狙いではなく、言論や報道の自由を守るためのものである。 

インターネットの普及により、ブログなど個人が情報を発信できる機会も広まった。既存のマスメディアだけが言論や表現の自由を担保できるわけではなくなった。ネット革命という技術革新の中で、どういう情報サービスが収益性を保ちつつ、民主主義を担うメディアの役割を担えるのか。一連の再編の動きは、これからのメディアのあり方も問う。

首相と靖国 もう「参拝せず」と明言しては

毎日新聞 2007年5月9日 0時11分

安倍晋三首相が4月21~23日の靖国神社春季例大祭に「内閣総理大臣」名で「真榊(まさかき)」と呼ばれる供え物を奉納していたことが明らかになった。首相は奉納費として私費で5万円を納めたという。現職首相の奉納は中曽根康弘首相以来のことだ。

今回の一件で分かった一番のポイントは何か。安倍首相は自身の靖国参拝について「行くか、行かないか、行ったかどうかも明言しない」という戦略をとっている。だが、供え物の奉納がそうであったように、仮に首相が極秘に参拝したとしても秘密を保持し続けられるものではなく、いずれは公になるということではなかろうか。つまり、首相の「あいまい戦略」は現実にはなかなか通用しないということだ。

今度の奉納は靖国神社側の打診を受けたものだという。安倍首相は自身の参拝を見送る代わりに供え物をし、神社側や首相の靖国参拝を求める勢力に配慮したと見ることもできる。ただ、もしそうだとしても、その趣旨を首相が説明すれば、参拝しない意思を明確にすることになり、参拝支持派の反発を招く恐れがある。一方、中国などの反応を考慮すれば「奉納もしたし、参拝もする」とも言えない。今回の件に関しても首相はだんまりを決め込むのはそのためだろう。

裏を返せば、あいまい戦略は結果的に首相の行動を縛り、内外への説明の機会も奪っているのである。それは多くの人たちには中途半端で姑息(こそく)な対応と映るだろうし、首相の本意でもあるまい。

私たちは首相が就任直後、持論を抑制し、日中、日韓首脳会談を再開させた点を高く評価した。しかし、両国との間にある氷はまだ解け切ってはいない。今回の奉納は温家宝・中国首相の訪日直後である。首相が何も説明をしないと、中国、韓国に再び疑心暗鬼ばかりが募る可能性も否定できない。

従軍慰安婦問題を思い出そう。安倍首相は、旧日本軍の関与を認めた河野(洋平官房長官=当時)談話の見直し論に、いったんはくみするような姿勢を見せながら、日米間がぎくしゃくすると一転、火消しに回った。その経験は首相にも反省として残っているはずだ。中途半端な対応はかえって話をこじらせるだけだ。この際、「参拝しない」と明言するのが最も分かりやすいのではなかろうか。

靖国問題は依然、決着がついていないことも改めて指摘しておく。外交関係だけでない。参拝のみならず、首相の肩書での奉納は憲法の政教分離の原則に照らして問題はないのか。明確な結論が出ているわけではない。折しも日本遺族会は靖国神社に祭られているA級戦犯分祀(ぶんし)などの検討を始めた。A級戦犯合祀に対し、昭和天皇が不快感を示したという証言・資料が昨年来相次ぎ、遺族会にも分祀容認論が広がっているという。

いい機会だ。政界も忘れ去ったようになっている新たな国立追悼施設建設などについて、議論を再スタートさせるべきである。

首相と靖国―抜け出せぬジレンマ

朝日新聞20070509

靖国神社の春季例大祭で、安倍首相が神前にささげる供え物を出していた。「真榊(まさかき)」と呼ばれるサカキの鉢植えだ。「内閣総理大臣」という木札が付けられていた。首相の奉納は中曽根元首相以来約20年ぶりのことである。政府は、首相のポケットマネーで払い、私人としての事柄だから、「コメントすべきことではない」(塩崎官房長官)という立場だ。首相の肩書で、神事に使う供え物を奉納し、神社側も「お気持ちを示されたのだと思う。ありがたい」と歓迎している。これが「私人としての事柄」とは、なんとも奇妙な話である。

政教分離の原則から疑問があるのはもちろんのこと、忘れてならないのは靖国神社の性格だ。靖国神社は、隣国を侵略し、植民地化した戦前の軍国主義のシンボルだ。その歴史はいまもなお神社内の戦争博物館「遊就館」で正当化されている。さらに、先の大戦の責任を負うべき東条英機元首相らA級戦犯を合祀(ごうし)したことで、天皇の参拝も75年を最後に止まり、首相の参拝をめぐって国論も分裂した。

首相名で供え物を奉納することが政治色を帯びないわけがない。そのことは首相もわかっているだろう。本当は参拝したいが、中国や韓国との外交問題になるので控えている。一方で、参拝しないままでは本来の支持層である参拝推進派に見限られてしまう。せめて供え物ぐらいはしておきたいということではないか。

こうしたどっちつかずの態度をとるのは、いまに始まったことではない。昨年の春季例大祭のころは、自民党総裁選を前に、靖国神社参拝が争点になっていた。当時小泉内閣の官房長官だった安倍氏は「外交問題化している中、行くか行かないか、参拝したかしないかについても言うつもりはない」と述べた。その実、ひそかに靖国神社に参拝していたのだ。

安倍首相は就任直後に中韓両国を訪問し、両国との関係を劇的に改善した。その後、靖国神社に参拝していない。首相は慰安婦問題でも、日本の責任をあいまいにする発言をして国際社会から批判されると、訪米時にブッシュ大統領に謝罪した。

こうしたことが保守の支持層からの批判を招き、ここにきて「安倍氏の登場が保守つぶしの巧妙な目くらましとなっている」(評論家の西尾幹二氏)と嘆かれるほどになった。首相としては気が気ではあるまい。だが、首相がかつて掲げた勇ましい右寄りの課題は、実際に政権を担う身になると、実行することはむずかしい。

国際社会の一員としての日本の地位や9条の改憲を望んでいない世論などの制約の中で、ナショナリズムの地金を小出しにする。そんなやり方を続ける限り、首相がジレンマから抜け出す道はない。

Sunday, April 08, 2007

大リーグ放映権

第1回 ヤンキース入りした松井秀が、「ボクがメジャーに行ったら、イチローさんみたいに試合を中継してくれますか?」
(05/08/01)抜粋:日刊ゲンダイ連載【立花孝志 大リーグ中継の内幕】

3年前のオフ、松井秀喜がヤンキースへの移籍が決まったあと、NHKの関係者にこう言ってきたそうだ。NHKは現在、年間約300試合の大リーグを中継している。大リーグの試合はNHK、フジテレビ、TBS、BSi、BSフジ、スカパーが放送権を持つ。 BSに関してはNHKが30球団のうち14球団のホームゲームの放送権を優先的に取れる。

地上波の放送権は30球団の主催試合をNHKと民放2社できっちり3等分しているが、NHKが選んだ10週間分のゲームを優先的に中継できることになっている。 NHKはア・リーグ、ナ・リーグ30球団の中からイチローや松井秀など日本人選手がいるチームをピックアップする。それから日本でもなじみのある球団を取る。イチロー(マリナーズ)、松井秀(ヤンキース)、野茂(現ヤンキース3A)などがア・リーグ球団に属しているため、どうしても同リーグの試合が多くなる。

さらに放送権を持っていない残り16球団のホームゲームの中から、20試合を中継できる。これをワイルドカードと呼んでいる。 残り16球団のホームゲームはBSではBSiとBSフジが放送権を保有している。ヤンキースやマリナーズがビジターに出た試合をNHKではなく、民放の地上波あるいはBSが放送するのはそのためである。 

大リーグは1球団年間162試合を戦う。主催試合は81。ワイルドカードを除く、14球団のホームゲームだけでも1134試合の放送権をNHKは持つ。 松井秀喜がヤンキース入りした2003年には年間334試合を中継した。松井秀喜の心配は杞憂だったのである。それでも800試合以上は中継せずに“捨てて”いる。もったいないので、フジやTBSにまた売りをしたらどうかと提案したこともあったが、受け入れられなかった。ちなみにその年の日本のプロ野球の中継試合は149。 NHKがこれだけ大リーグ中継に力を入れるのは野茂の1年目の活躍で衛星放送の受信契約数が飛躍的に伸びたからだ。その後、マグワイアとソーサの本塁打記録争い、イチローや松井秀喜の活躍が追い風になり、受信契約を伸ばした。 それではNHKは放送権料として一体、いくら払っているのか。

第2回 海老沢会長が激怒して放送権料が年間36億円が25億に
(05/08/02)抜粋:日刊ゲンダイ連載【立花孝志 大リーグ中継の内幕】

年間約25億円。これがNHKが払う大リーグの放送権料である。5年契約が切れたため、2004年に契約を更新。それまでの約2倍で5年契約を結んだ。 それでも当初の契約交渉の段階では金額は約36億円だった。もともと大リーグ中継の放送権は電通がMLB(大リーグ機構)から購入。それをNHK、TBS、フジ、BSi、BSフジ、スカパーの6社に販売する。03年限りで契約が切れるため、電通は年間約36億円の5年契約で放送権を買った。前回の3倍である。

それをNHKに売り込んだのだが、当時のNHKの海老沢会長の逆鱗に触れたと聞いた。というのもBS放送が開始した直後、NHKの関連会社であるMICOがMLBとPGA(米プロゴルフツアー)の両者と直接交渉を行おうとしたからだ。代理店を介在させなければ、より安く放送権を購入できると考えたからだ。ところがそれまで両者の放送権を持っていた電通が「MLBだけはウチに放送権を残してほしい」とNHKに泣きを入れたという。そして電通に放送権を譲った経緯がある。それが突然、3倍のカネでの契約延長の話。昔の恩義を忘れたのか、と激怒した海老沢会長(当時)は「メジャーリーグの中継なんかしなくてもいい!」とまで言ったと聞くが、結局、電通の関係者が海老沢会長の自宅前で土下座して陳謝。 

海老沢会長は「2倍以上は出せない」と値下げを要求。電通側が受け入れ、前回の約倍の年間約25億円で妥結したのである。民放の放送権料はNHKの10分の1くらいだと聞く。だからこそ前回書いたように、NHKが優先的に中継できる球団、試合を指定できるのである。さて電通は36億円で売るはずのメジャーの放送権が25億円でしか売れなかった。NHKは大助かりだが、電通にとっては大きな損失だ。ところが電通はそれを逆手にとって新たな商売、収益源を生み出した。それがNHKの大リーグ中継にも波紋を招くことになる。それは一体なにか。


第3回 NHK中継に民間企業CMが映るカラクリ
(05/08/03)抜粋:日刊ゲンダイ連載【立花孝志 大リーグ中継の内幕】

テレビ視聴者にしか見えないバーチャル広告なのだが前回、NHKの大リーグの放送権料が当初の年間約36億円から、約25億円にダウンして契約した話をした。MLB(大リーグ機構)から放送権を購入した電通としては、単純に計算しても約11億円の差損が出る計算だ。ところで大リーグの中継ではバックネットの下のフェンスに、日本の民間企業の広告が映ることがある。実際のメジャーの球場にはない看板広告だ。テレビの試合中継にかぶせて映っているだけで、テレビ視聴者にしか見えないものである。

いわゆるバーチャル広告だ。実はあれが約11億円の差損と関係がある。約11億円の差損が生じることになった電通はその代わりに、NHKが放送する試合の事前通告とバーチャル広告の了解を取り付けた。すなわち、NHKが中継する試合を事前(1カ月前)に連絡してもらい、それに合わせて企業からバックネット下の広告を取るのである。

その際、米国のテレビ局が中継する試合をそのまま流すのでは広告は入らない。大リーグの試合を中継する米国のテレビ局は、MLBI(大リーグ機構インターナショナル)にも映像を流す義務がある。その映像をMLBIは世界各国、各地域に流すのだが、その段階で電通は募集した企業の広告をゲームの画面にかぶせる。もちろん、MLBIの許可を取ったうえでのことである。中継の最中にNHKのアナウンサーが、「これは大リーグのアジア向けの放送をそのまま流しているため、広告が映っております」と言っているのはそのためだ。 NHKで全国放送される影響は大きなものがあるのだろう、電通はそのバーチャル広告で差損を上回る収入をあげているとも聞いている。

NHKには一銭も入らないのだが、バーチャル広告が入ったから放送権料も安くなったという考え方もできる。 大リーグ中継に限らず、スポーツと企業スポンサーは今では切っても切れない関係にある。その両社の関係を考えさせられる出来事でもあった。

第4回 大リーグの年間放送権料は高いのか?
(05/08/05)抜粋:日刊ゲンダイ連載【立花孝志 大リーグ中継の内幕】

大相撲・Jリーグ・プロ野球に比べて、NHKの大リーグの年間の放送権料が約25億円であることは以前書いた。他の競技と比較するとどうなのか。例えば大相撲は年間30億円、Jリーグは19億円、ウィンブルドン・テニスは約8億円、米プロゴルフツアーは約15億円、プロ野球は巨人戦の1試合1億7000万円を含め、約35億円である。メジャーの放送権料が高いか安いかは、関心を持つ度合いにもよろうが、製作単価だけをみると実は安上がりなのである。昨年NHKは大リーグの試合を311試合、中継した。1本当たりの製作単価は1時間で473万円。大リーグはアメリカから映像が送られてくるからだ。

日本のプロ野球やJリーグなどの試合を放送するには、現場に中継車を出し、アナウンサーや技術部員などスタッフを派遣。独自の映像を作らなければならない。メジャーリーグ中継では、送られてくる映像にかぶせて実況や解説は必要だが、現場にスタッフや機材を出すことはまずない。同じ野球でもプロ野球では製作単価は1時間当たり1096万円と倍以上かかるし、国内プロゴルフはさらに高く2301万円になっている。これはゴルフが野球やサッカーなどより、カバーする場所が広いからだ。ちなみに米ゴルフツアーは976万円と国内ゴルフの半分以下だ。逆に土俵を中心に映している大相撲のそれは838万円とプロ野球より低くなっている。 しかも大リーグ中継はサッカーなどに比べ、1本当たりの放送時間が平均3時間と長い。さらに地上波、BS、ハイビジョンの一体化放送をしていることもメリットになっている。

私が入局した20年前に比べ、NHKの収入は約倍の約6800億円にアップしている。それには大リーグ中継が寄与しているのは間違いない。 ちなみに今週末から始まる高校野球甲子園大会は夏、春とも放送権料はゼロである。 大リーグ中継の話はこれでひとまず終わりとさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。

Thursday, April 05, 2007

「公共放送の在り方問う」 受信料不払い訴訟で弁護団

NHK受信料不払い問題で東京の弁護士10人が4日、支払い督促に異議を申し立て、東京地裁、簡裁で裁判が続いている3人の依頼を受け弁護団を結成した。都内で開いた記者会見で「不祥事や政治家との関係で国民の信頼を裏切り、契約に違反した」と述べ、公共放送の在り方をめぐってNHKと全面的に争う姿勢を示した。

弁護団の沢藤統一郎弁護士は「NHKは信頼に応える放送、報道をするのに対して、視聴者が受信料を支払うという関係が放送法の趣旨だ」と指摘。その上で「信頼を損なっても解約できない契約は無効とも言える。公共放送が何によって成り立つかを正面から問う重大な裁判だ」と訴えた。

依頼した3人はいずれも都内の30代の男性。カラーテレビ受信契約を結んだが、約4万1000円-5万3000円の支払いが滞っているとして督促を受けた。相次ぐ不正経理などの不祥事や番組内容への不満などを理由に異議を申し立てているという。(2007年4月4日 18時55分,共同)

Wednesday, April 04, 2007

동북아시아의 시민공론장과 저널리즘

강상중 교수(도쿄대학)

오늘 강연의 세 가지 키워드는 동북아, 공론장(public sphere), 저널리즘이다. 아사히신문, 마이니치신문 등 일본의 일반적인 전국 신문들은 동북아시아라는 말 대신 북동아시아라는 말을 사용한다. 한국이나 북한, 중국에서 동북아라고 부르는 것과 다르다. 왜 그러는가? 북동아라는 말은 동북아에 대한 영어표현인 'Northeast Asia'를 직역한 것인데, 영어표현 'Southeast Asia'를 남동아라고 하지 않고 동남아라고 부르는 것과 비교된다. 이것은 일본의 저널리즘이나 학계가 동북아 지역을 태평양 건너편의 시각으로 바라보고 있기 때문이다. 구체적으로 말하자면 미국의 시각을 통해 이 지역을 바라본 것이다. 오늘은 미국 문제를 직접 언급하지는 않겠지만 미국의 그늘이란 부분을 생각하지 않을 수는 없다.

적개심, 불안, 적의에 의해 형성되는 '공적인 문제'

일본의 저널리스트와 연구자들은 일본 언론의 북한 보도 행태에 대해 말하지 않고서는 일본의 미디어 현상을 얘기할 수 없다. 과거 북한에 대한 보도는 엄청난 것이었고 이 문제는 현재진행형으로 지금도 막대한 문제가 있다. 세계화가 진행되고 있는 현 시점에서 가장 큰 문제는 '공적인 것'이 위축되거나 혹은 변질된다는 것이다. 세계화는 단순히 경제, 금융, 기술의 문제가 아니다. 공적인 것으로서의 정치가 없어지고, 위축되고, 축소되고, 변질되는 것이 가장 큰 문제다.

1998년 바우만(Z. Bauman)이란 학자는 <정치의 발견(In search of politics)>이란 책에서 흥미로운 사례를 소개했다. 형기를 마친 아동 성범죄자가 어떤 지역에 들어왔다. 그 지역은 혼란에 빠졌고, 지금까지 공적인 발언을 한 적도 없고 관심도 없었던 한 주부가 그 지역의 평화를 위해 전투적으로 활동했다는 얘기다. 그 주부의 활동은 불안, 증오심, 가족애 등에 따른 것이었고 그것이 정치적인 정체성을 형성했다. 공적인 문제를 긍정적, 적극적인 요인이 아니라 적개심, 불안 등 부정적인 요인을 통해 확립해 간다는 것이다. 바우만은 거기에 언론이 개입되면 자유로운 언론 공간이 없어진다고 주장했다.

일본에서의 북한 보도도 마찬가지다. 일상적인 가족 사랑과 국가적인 공동체가 연결이 돼서 폐쇄적인 보도가 확립된 게 아닐까 한다. 즉 내적인 불안을 부추기는 결항성과, 적국을 만들어내는 집단국가가 생겼을 때 자유로운 언론 공간은 너무 쉽게 소멸되는 하나의 사례라고 생각한다. 중국의 반일적인 보도도 비슷한 맥락에서 이해할 수 있다. 불안, 증오, 적의 같은 부정적인 감정을 지렛대로 해서 공적인 것이 확립되어 갔을 때 아주 강한 압력과 대립이 성형성된다는 것을 우리는 일상생활을 통해 알 수 있다.

냉전의 불완전한 붕괴

교토(京都)대학의 야마구라 시이치라는 동아시아 전문가의 말을 빌린다면 동북아 지역은 세 가지 단층으로 나눌 수 있다. '관계(nexus)로서의 동아시아', '역사로서의 동아시아', '미래를 향한 프로젝트로서의 동아시아'가 그것이다. 관계로서의 동아시아는 분명 현재의 동북아와 관련된 것이다. 그렇다면 동북아는 어디인가? 여러 이론이 있지만 경제적으로만 보자면 일본, 한국, 중국대륙, 경우에 따라 대만과 몽골을 포함하는 지역이다. 그러나 나는 6자회담으로 대표되는 6개국을 동북아 지역에 포함시켜야 한다고 본다. 즉 남북한과, 중국, 일본, 미국, 러시아를 포함해야 한다는 것이다. 하지만 협의의 동북아는 역시 한중일 3국을 지칭한다. 3개국은 세계 경제 안에서 엄청난 역할을 하고 있다. 동남아를 포함해 동아시아에서의 무역은 유럽연합(EU)에 비견될 정도로 커졌다. 외화의 이동, 인적·물적 이동, 학술의 이동, 문화의 이동 등은 실체적으로 EU 통합에 필적할 만하다. 그러나 유감스럽게도 이 지역에는 여전히 국가의 로컬리티가 남아 있고 국가간 대립은 경제·기술·문화의 교류와 비대칭적으로 이뤄지고 있다.

대중문화의 관점에서 볼 때 한류(韓流), 일류(日流), 화류(華流)가 있지만 한편에서는 혐한(嫌韓), 혐중(嫌中), 반일(反日)이 있다. 이렇게 보더라도 다양한 관계, 넥서스가 있는 한편으로 그에 대한 일종의 안티테제가 있다. 이런 가운데 이 지역에 제대로 된 공동체를 만들 수 있나. 어떤 아이덴티티를 형성할 것인가. 왜 이런 현상이 나타나는가. 그것은 냉전의 붕괴라는 것에서 실마리를 찾을 수 있을 것으로 보인다. 국가와 민족으로 분열·대립되고 내전의 상처가 있는 이 지역에서 하나의 틀이 붕괴되는 것은 틀림없다. 그러나 완전히 붕괴된 게 아니라 형태를 바꿔 가치와 행동과 문화의 패턴을 형성하고 있는 요인이 여전히 남아 있다.

기억의 인터페이스를 구축하자

둘째, 역사로서의 동아시아는 이 지역이 EU 및 서유럽과 다른 것은 역사의 무게가 해소되지 않았다는 것이다. 내전을 했던 분단국가가 현존하고 있다. 역사를 둘러싼 반목도 있다. 1995년 <타임>지가 '역사의 전쟁은 끝났나'라는 특집에서도 일본이 어떻게 역사와 싸우고 있는지에 대한 기사를 썼다. 과거의 역사를 어떻게 생각할 것인가. 종군위안부, 오키나와, 남경대학살 등을 둘러싼 역사 문제가 있다. 이것은 중국에서의 역사 문제, 한국에서의 베트남전 문제 등과도 관련이 있다. 한·중·일이라는 국가의 단위로 봤을 때 역사라는 짐으로부터 자유롭지 못한 것이다. 역사가 어떻게 기록되고 있고, 어떤 식으로 국가적 정체성과 역사가 형성됐는가, 역사의 기억에 대한 공유가 가능한가 등을 한국의 대학과 시민사회, 저널리스트들과의 관계를 통해 심화하고 기억의 인터페이스를 구체적으로 공유해야 한다.

구체적으로 말하자면 일본의 전쟁에 대한 기억, 그 가운데서 오키나와 전쟁에서 싸우던 이들, 히로시마 나가사키에서 상처입은 사람들, 중국에서 상처입은 사람, 동아시아에서 죽은 사람들은 입장이 매우 다르다. 과거 식민지 지배와 전쟁의 기억이 한국과 북한에 있어 어떻게 형성되고 변질되고 창조됐는가를 우리는 무릎을 맞대고 여러 형태로 논의할 수 있다. 그러면서 상호간 기억의 인터페이스를 확대하는 대학과 저널리스트와 시민사회의 연대가 가능하다고 본다. 이런 움직임이 작게나마 여러 사회단체에서 시도되고 있는 것도 사실이다.

6자회담의 새로운 의미

세번째는 동북아를 하나의 프로젝트로 생각하는 것이다. 프로젝트로서의 동북아를 생각했을 때 동북아는 로컬한(지방적인) 것과, 내셔널한(국가적인) 것과, 리저널한(동북아 지역적인) 것이 중층적으로 연계돼있다. 나는 규슈 구마모토에서 태어났다. 규슈는 한국과 중국의 관광객 없이는 살아갈 수 없을 정도로 상호 의존이 심화된 상태다. 규슈를 중심으로 동심원을 그리면 부산, 서울, 상하이가 도쿄보다 가깝다. 그렇게 보면 로컬한 것이 인터로컬(지방간)하게 혹은 리저널하게 결부되는 것으로 나아가는 것이다. 따라서 '인터로컬'로서의 동북아를 생각할 수 있을 것이다.

인터내셔널로서의 동북아 즉 국가간, 국민간 관계로 나아가는 동북아에서 가장 핵심적인 것은 6자회담이다. 안보문제는 로컬한, 내셔널한, 리저널한 관점 모두에서 굉장히 중요한 문제다. 그것을 가장 첨예하고 상징적으로 보여주는 것이 6자회담이다. 우리는 국가간 관계없이 미래 논할 수 없다. 그러나 국가간의 관계에서만 미래를 논하는 것은 과거의 경험을 업신여기는 것이다. 국가는 만능의 존재가 아니기 때문이다.

그래서 6자회담을 다자간 안보틀로 삼아야 하고, 그를 통한 상설기구가 만들어져 군비, 군축, 대량살상무기 상호관리, 신뢰조성 메커니즘을 위한 틀을 만들어야 한다. 최근 6자회담에서 나온 합의에는 5개의 실무회의 중에서 동북아의 안정과 평화의 메커니즘을 논하는 실무회의가 있다. 나는 그런 프로젝트를 통해 현실이 그걸 따라가고 있는 걸 보면서 일종의 확신을 갖는다.

동아시아 지역에서는 베트남전과 한국전쟁이라는 최대 규모의 준국제전쟁이 냉전 시기에 일어났다. 두 전쟁의 사망자만 해도 600~700만 명이고 미군도 10만 명 이상이 사망했다. 한국전쟁에서는 정전협정이나 평화협정 없이 60년이 흘렀다. 독일, 서유럽과는 달리 이 지역에는 또다시 전쟁의 가능성이 남아 있다. 6자회담은 바로 이런 상태에 종지부를 찍고 다자간 안보틀을 형성할 수 있게 해준다.

하지만 일본의 현실을 생각하면 국가의 행위와 여론에는 괴리가 있다고 본다. 국가의 현실주의와 여론의 비현실주의가 괴리를 나타내고 있는 현상을 어떻게 생각해야 하나. 굉장히 어려운 문제지만 6자회담의 귀추가 이 지역이 진정으로 동북아로서의 지역성을 발휘할 것인가를 결정할 것이다.

둘째, 프로젝트로서의 동북아를 생각할 때 각국의 국민공동체가 분열하고 대립하는 게 아니라 동북아라는 지역 네트워크가 중층적이고 다원적으로 확산되는 프로젝트로 생각하고 싶다. 그같은 지역 네트워크가 보다 강화되고 동북아를 우리의 생활 현장으로 실감하게 되는 시대를 앞당길 수 있다면 동북아를 덮어온 내셔널리즘이라는 괴물은 더 이상 날뛰지 않고 새로운 지역통합의 시대로 나아갈 것이라고 기대해왔다. 그런 점에서 저널리즘의 의의는 결정적으로 중요하다.

연대의 복원

저널리즘은 사적인 것과 공적인 것을 매개하는 것이다. 자유로운 언론 공간에서 그 사회가 공유해야 할 과제를 발견하고 분석해 제시하는 것이다. 누구를 위해 발신할 것인가, 무엇을 발신할 것인가가 언론의 중요한 과제라고 본다.

언론인들은 과연 무엇을 기준으로 기사를 썼고, 무엇을 보도했고, 무엇을 조사했고, 언론인의 원칙은 무엇인가. 구체적으로 중국에서 '반일폭동'이 일어났을 때, 혹은 북한 보도에 대해 지방지나 통신사는 어떻게 보도했는가, 한국과 중국에서 보는 관점은 무엇인가 등 각각의 시각의 호환성과 원근법을 얘기함으로써 자신의 기준을 다시 행각하고 재편하는 것이 한중일 저널리스트들에게 필요하고, 가능하다고 본다.

결론은 진부하다. 프랑스 혁명에서 말하는 자유, 평등, 연대(박애)라는 게 있는데, 나는 연대가 가장 단순하면서도 중요한 것이라고 본다. 재작년 프랑스에서 일어났던 폭동을 알아보기 위해 2주간 프랑스에 간 적이 있었다. 이민자들이 차를 불태우는 폭동이 있었지만 그걸 보면서 느낀 것은 프랑스의 공화성을 지탱하고 있는 자유, 평등, 박애라는 것 중에서 연대가 결여됐다는 인상을 받았다. 이 연대를 어떻게 구체적으로 일을 통해 달성할 것인가는 동북아에서 가장 중요한 것이고, 대학과 저널리즘, 시민사회의 삼위일체를 통해 모색해야 한다고 본다.(프레시안에서 옮김)

Monday, April 02, 2007

In Japan, a Historian Stands by Proof of Wartime Sex Slavery

By NORIMITSU ONISHI The New York Times, Published: March 31, 2007

TOKYO

IT was about 15 years ago, recalled Yoshiaki Yoshimi, a mild-mannered historian, when he grew fed up with the Japanese government’s denials that the military had set up and run brothels throughout Asia during World War II.

Instead of firing off a letter to a newspaper, though, Mr. Yoshimi went to the Defense Agency’s library and combed through official documents from the 1930s. In just two days, he found a rare trove that uncovered the military’s direct role in managing the brothels, including documents that carried the personal seals of high-ranking Imperial Army officers.

Faced with this smoking gun, a red-faced Japanese government immediately dropped its long-standing claim that only private businessmen had operated the brothels. A year later, in 1993, it acknowledged in a statement that the Japanese state itself had been responsible. In time, all government-approved junior high school textbooks carried passages on the history of Japan’s military sex slaves, known euphemistically as comfort women.

“Back then, I was optimistic that this would effectively settle the issue,” Mr. Yoshimi said. “But there was a fierce backlash.”

The backlash came from young nationalist politicians led by Shinzo Abe, an obscure lawmaker at the time in the long-ruling Liberal Democratic Party, who lobbied to rescind the 1993 admission of state responsibility. Their goal finally seemed close at hand after Mr. Abe became prime minister last September.

Mr. Abe said he would adhere to the 1993 statement, but he also undercut it by asserting that there was no evidence showing the military’s role in forcing women into sexual slavery. His comments incited outrage in Asia and the United States, where the House of Representatives is considering a nonbinding resolution that would call on Japan to admit unequivocally its history of sexual slavery and to apologize for it.

To Mr. Yoshimi, Mr. Abe’s denial sounded familiar. Until Mr. Yoshimi came along 15 years ago, the government had always maintained that there were no official documents to prove the military’s role in establishing the brothels. Mr. Abe was now saying there were no official documents to prove that the military forcibly procured the women — thereby discounting other evidence, including the testimony of former sex slaves.

“The fact is, if you can’t use anything except official documents, history itself is impossible to elucidate,” said Mr. Yoshimi, a history professor at Chuo University here.

The emphasis on official documents, according to Mr. Yoshimi and other historians, has long been part of the government’s strategy to control wartime history. In the two weeks between Japan’s surrender on Aug. 15, 1945, and the arrival of American occupation forces, wartime leaders fearing postwar trials incinerated so many potentially incriminating documents that the Tokyo sky was said to be black with smoke. Even today, Japan refuses to release documents that historians believe have survived and would shed light on Japan’s wartime history.

Although Mr. Yoshimi found official documents showing the military’s role in establishing brothels, he is not optimistic about unearthing documents about the military’s abduction of women.

“There are things that are never written in official documents,” he said. “That they were forcibly recruited — that’s the kind of thing that would have never been written in the first place.”

John W. Dower, a historian of Japan at the Massachusetts Institute of Technology, said Mr. Yoshimi’s “extremely impressive” work has “clarified the historical record in ways that people like Prime Minister Abe and those who support him refuse to acknowledge.”

MR. YOSHIMI grew up in Yamaguchi Prefecture in western Japan, in a household with fresh memories of the war. He traces his interest in history to a junior high school lecture on the nation’s American-written, pacifist Constitution and its guarantee of human rights. He was impressed that the Constitution “even had something to say about a kid like me in the countryside.”

After completing his studies at the University of Tokyo, Mr. Yoshimi concentrated on Japan’s postwar democratization. It was while searching for documents related to Japan’s wartime use of poison gas in the Defense Agency’s library that he first stumbled upon proof of the military’s role in sexual slavery.

Mr. Yoshimi copied the document but did not publicize his finding. At the time, no former sex slave had gone public about her experiences, and awareness of wartime sex crimes against women was low. But in late 1991, former sex slaves in South Korea became the first to break their silence. When the Japanese government responded with denials, Mr. Yoshimi went back to the Defense Agency.

Of the half-dozen documents he discovered, the most damning was a notice written on March 4, 1938, by the adjutant to the chiefs of staff of the North China Area Army and Central China Expeditionary Force. Titled “Concerning the Recruitment of Women for Military Comfort Stations,” the notice said that “armies in the field will control the recruiting of women,” and that “this task will be performed in close cooperation with the military police or local police force of the area.”

In another document from July 1938, Naosaburo Okabe, chief of staff of the North China Area Army, wrote that rapes of local women by Japanese soldiers had deepened anti-Japanese sentiments and that setting up “facilities for sexual comfort as quickly as possible is of great importance.” Yet another, an April 1939 report by the headquarters of the 21st Army in Guangzhou, China, noted that the 21st Army directly supervised 850 women.

Mr. Yoshimi went public by telling Asahi Shimbun, a national daily newspaper. The attention led to years of harassment from the right wing, he said, including nightly phone calls.

These documents had survived because they had been moved 25 miles west of central Tokyo before the end of the war, Mr. Yoshimi said. The postwar American occupation forces had then confiscated the documents, eventually returning them to Japan in the 1950s.

DESPITE the government’s efforts to hide the past, Mr. Yoshimi succeeded in painting a detailed picture of Japan’s wartime sexual slavery: a system of military-run brothels that emerged in 1932 after Japan’s invasion of Manchuria, then grew with full-scale war against China in 1937 and expanded into most of Asia in the 1940s.

Between 50,000 and 200,000 women from Japan, Korea, Taiwan, China, the Philippines, Indonesia and elsewhere were tricked or coerced into sexual slavery, Mr. Yoshimi said. Thousands from Korea and Taiwan, Japanese colonies at the time, were dispatched aboard naval vessels to serve Japanese soldiers in battlefields elsewhere in Asia. Unlike other militaries that have used wartime brothels, the Japanese military was the “main actor,” Mr. Yoshimi said.

“The Japanese military itself newly built this system, took the initiative to create this system, maintained it and expanded it, and violated human rights as a result,” he said. “That’s a critical difference.”

Mr. Yoshimi said he was unsurprised by the most recent moves to deny the wartime sex slavery. He said they were simply the culmination of a long campaign by nationalist politicians who have succeeded in casting doubt, in Japan, on what is accepted as historical fact elsewhere.

In 1997, all seven government-approved junior high school textbooks contained passages about the former sex slaves. Now, as a result of the nationalists’ campaign, only two out of eight do.
“Mr. Abe and his allies led that campaign,” Mr. Yoshimi said, “and now they occupy the center of political power.”

Wednesday, March 28, 2007

受信料義務化見送りでNHKが恐れる事態

J-CASTニュース, 2007/3/29

政府が今国会に提出する放送法改正案で、焦点だったNHK受信料の支払い義務化が見送られた。「受信料の義務化と値下げはセットだ」と2007年1月に発言して、NHKに約2割の値下げを迫った菅義偉総務相と、抵抗するNHKとの攻防は3カ月続いた。この戦いは、夏の参院選挙前に値下げを確約させたかった菅総務相と、悲願の受信料義務化を逃したNHKの“相打ち”で終わった。 ただし、NHK内には「義務化見送りで払わなくてよくなった」との誤解が広がるのでは、との不安が残った。

混乱の元は菅総務相の読み違い

受信料値下げをめぐる攻防で、菅総務相は、「絶対に欲しがるはず」と支払い義務化を打ち出の小づちのように振り回して値下げを迫った。その強硬姿勢に自民党内の一部から疑問の声が出たり、一時は放送法改正案の国会提出の見通しが立たなくなったりの混乱があった。菅総務相の強硬姿勢を支える読みは、NHKの「義務化は欲しいが、値下げを受け入れてまでのものではない」という認識との間に大きなズレがあった。

受信料の義務化問題はそもそも、04年夏に発覚したNHKプロデューサーによる制作費の横領事件を皮切りに、NHKの不祥事が次々と明るみに出て、受信料の不払いが広がったことから持ち上がった。不祥事発覚前は8割だった受信料の収納率が7割に低下した。

これを放置すれば受信料で支える公共放送の仕組みが崩れかねないとみた総務省が、法案に支払い義務化を盛り込む準備を進めた。06年12月には義務化による増収の試算がまとまり、菅総務相は「2割の値下げが可能」と確信を持ったとされる。
だが、NHKは強硬に値下げを拒否した。

「選挙目当てが見え透いている。2割値下げは菅総務相が急に言い出した。次の人になればどうなるかわからない。目先のことで何年も先までの約束はできない」 と、NHKのある幹部は警戒心をあらわにしていたという。

また、「義務化だけでは、値下げできるほど劇的な増収は見込めない」という現実的な判断もNHKにはあった。罰則を追加するわけでもなく、最も困難な転居情報の入手にも手間がかかる現状は何も変わらないからだ。

「義務化だけなら参院選挙は戦えない」

NHKの激しい抵抗を受けて、自民党内には「義務化だけなら参院選挙は戦えない」と、見送り論は早くから既定路線になっていた。議論の舞台となった同党の通信・放送産業高度化小委員会を切り盛りした片山虎之助委員長(参院幹事長)は「義務化は今回は見送るが、やらないということではない。引き続き検討して早い時期にやる」と強調する。だが、NHKが07年9月に新しい経営計画をまとめて値下げを発表するとしても、「その後に義務化法案だけ単体で提出できるのか」と疑問視する声も多い。

義務化が見送られたことに対してNHKは、「現状でも実質的に支払い義務はある。特に影響はない」と表向き平静を装っている。ただ、「義務化見送りで、払わなくていいと誤解されては困る」との声もある。

テレビを設置したらNHKとの契約を義務付けている放送法の現行規定はそのままなのだが、「契約義務もなくなった」などと曲解が広がれば、ますます受信料が支払われなくなる恐れもあり、まだまだ問題は尾をひきそうだ。

Monday, March 26, 2007

Why I am saying sorry for London's role in this horror

The state failure to issue an apology for a crime as monstrous as the slave trade diminishes Britain in the eyes of the world Ken LivingstoneWednesday March 21, 2007The Guardian

Next Sunday marks the bicentenary of the abolition of one of history's greatest crimes - the transatlantic slave trade. The British government must formally apologise for it. All attempts to evade this are weasel words. Delay demeans our country. Recalling the slave trade's dimensions will show why. Conservative estimates of the numbers transported are 10-15 million; others range up to 30 million. Deaths started immediately, as many as 5% in prisons before transportation and more than 10% during the voyage - the direct murder of some 2 million people.

Conditions imposed on survivors were unimaginable. Virginia made it lawful "to kill and destroy such negroes" who "absent themselves from ... service". Branding and rape were commonplace. A Jamaican planter, Thomas Thistlewood, in 1756 had a slave "well flogged and pickled, then made Hector shit in his mouth" for eating sugar cane. From 1707, punishment for rebellion included "nailing them to the ground" and "applying fire by degrees from the feet and hands, burning them gradually up to the head".

When in 1736 Antigua found there was to be a rebellion, five ringleaders were broken on the wheel, 77 burned to death, six hung in cages to die of thirst. For "lesser" crimes, castration or chopping off half the foot were used. A manual noted: "Terror must operate to keep them in subjection."

Barbarism's consequences were clear. More than 1.5 million slaves were taken to the British Caribbean islands in the 18th century, but by its end there were only 600,000. By 1820, more than 10 million Africans had been transported across the Atlantic and 2 million Europeans had moved. But the European population grew to 12 million while the black slave population shrank to 6 million.

If the murder of millions, and torture of millions more, is not "a crime against humanity", these words have no meaning. To justify murder and torture on an industrial scale, black people had to be declared inferior, or not human. As historian James Walvin noted, there was a "form of bondage which, from an early date, was highly racialised. By 1750, to be black in the Americas (and often in Europe) was to be enslaved." The 1774 History of Jamaica argued black slaves were a different species, able to work "in a very bungling and slovenly manner, perhaps not better than an orangutan".

Material being produced today to mark the anniversary of the abolition of the slave trade makes it appear that white people liberated black - the assumption being they could not do it themselves. In reality, slaves rose against the trade from its inception. This broke it.

The first recorded slave revolt was in 1570. There were at least 250 shipboard rebellions. Jamaican slave society faced a serious revolt every decade, in addition to prolonged guerrilla war. In 1760, 30,000 Jamaican slaves revolted. The culmination, recorded in CLR James's magisterial The Black Jacobins, was the 1791 slave revolt in St Domingue. After abolition of the trade, slavery in British possessions was abolished following revolts in Barbados in 1816, Demerara in 1823, and Jamaica in 1831, in which 60,000 slaves participated. For this reason Unesco officially marks August 23, the anniversary of the St Domingue rebellion's outbreak, as slavery's official remembrance day.

No one denigrates William Wilberforce, but it was black resistance and economic development that destroyed slavery, not white philanthropy.

Slavery's reality is increasingly acknowledged outside Britain. One of the few things on which I agree with George Bush is his description of transatlantic slavery as "one of the greatest crimes of history". The Virginia general assembly last month expressed "profound regret" for its role, stating slavery "ranks as the most horrendous of all depredations of human rights and violations of our founding ideals". The French national assembly declared slavery a "crime against humanity". In 1999, Liverpool became the first major British slaving city to formally apologise. The Church of England Synod followed suit.

The British government's refusal of such an apology is squalid. Until recently, almost unbelievably, it refused even to recognise the slave trade as a crime against humanity, on the grounds that it was legal at the time. It helped block an EU apology for slavery.

Two arguments are brought forward against official apology - not only by the government but by David Cameron. First, an apology is unnecessary because this happened a long time ago. This would only apply if there had been a previously apology - there hasn't been. Slavery was the mass murder of millions of people. Germany apologised for the Holocaust. We must for the slave trade.

Second, that apologising is "national self-hate". This is nonsense. Love of one's country and its achievements is based on reality, not denying it. A Britain that contributed Shakespeare, Newton and Darwin to human civilisation need fear comparison with no one. A British state that refuses to apologise for a crime on such a gigantic scale as the slave trade merely lowers our country in the opinion of the world.

It is for that reason that I invite all representatives of London society to join me in following the example of Virginia, France, Liverpool and the Church of England, by formally apologising for London's role in this monstrous crime.

Ken Livingstone is the mayor of London mayor@london.gov.uk