Tuesday, January 30, 2007

NHK改革

全国紙の社説が出揃ったので見てみよう。
by http://mit56.way-nifty.com/dawn/2005/09/post_b865.html

○朝日新聞(9/21付)『NHK改革 視聴者も声を上げよう』
 ~「ここはひとつ、視聴者が大いに声をあげたい。NHKは必要なのか不要なのか。必要だとしたら、どんな組織、番組がいいのか。不祥事をきっかけに、支払い拒否という形で視聴者は意思表示をした。次は、もっと根本的な議論を深めたい。」
○読売新聞(9/21付)『[NHK再生]「不払い問題解決に一層の努力を」』
 ~「(中長期的には、法改正も含めた制度そのものの見直しも検討されねばならないが、)まずは眼前の不払い問題を解決しないと、NHKは再生への一歩を踏み出せまい」
○毎日新聞(9/21付)『NHK新生プラン 支払い督促は反発を招く』
 ~「こうした問題(公共放送の担うべき分野・規模の問題)にNHKだけで答えを出せといっても無理なことだろう。テレビを設置した人にNHKとの受信契約を義務づけているのは放送法だが、放送法の改正も含めNHKについては国会できちんと論議し、抜本的な改革プランを国民に提示すべきだ。」
○産経新聞(9/23付)『NHK新生プラン 公共放送の「原点」に返れ』
 ~「視聴者に支持されてこそ成り立つ公共放送の責務と存在意義とは何だろう。不払い防止に法的措置を考える前に、NHKは今一度その原点に立ち返るべきではないか。」
○日経新聞(9/23付)『NHKの「新生プラン」に欠けるもの』
 ~『問題はそもそもプロデューサーの制作費着服が発端であり、社内体制を改める前に「不公平是正」を理由に法的措置を検討することには疑問を禁じえない。むしろこれを機に地上デジタル放送時代に見合う公共放送の姿を考えるべきである。』

以上が、各紙の見出しと結論めいた部分の抜粋である。

もう少し細かく見ると次の通りである。

○朝日新聞
・視聴者第一主義⇒悪くないが、具体性に乏しい。内外意見聴取は評価しうる。プランの内容についても必要。
・組織のスリム化⇒収支好転には当然のこと、チャネルのいくつかの返上も必要。
・受信料の公平負担(裁判所を通じた支払督促)⇒不払い者側の反発必至、完全解消疑問。
・特殊法人維持⇒NHK不要論、民営化論のなか、説得力ある説明必要。
○読売新聞
・スリム化⇒不祥事の続発→受信料不払いと云う構図から見て、当然の措置。但し、番組の質の低下や災害情報などの公共放送の役割に手抜きの発生は駄目
・支払い督促⇒督促の実効性、手続き費用の問題、視聴者の受け止め方などの万全の事前調査必要
○毎日新聞
・支払い督促⇒「コスト的にも見合うか疑問視されている」。実行に移すか曖昧(心理作戦)は逆効果(視聴者の怒りの増幅)
・公共放送の担うべき分野・規模の問題⇒減収を食い止めても解決しない。
○産経新聞
・組織や業務の大幅な改革・スリム化⇒評価できるが、根幹の問題(不払い増加)の解決疑問
・公共放送としての経営の透明性確保に問題
 NHK予算⇒国会承認事項だが、予算執行内容の議論なし。情報開示が不十分。
 「子会社・関連会社組織の不透明さも問題視されている」
・経営監視機能⇒「自主自立」に疑問、第三者機関の創設などの検討。
○日経新聞
・支払い督促⇒実質的不公平是正に疑問
・問題点1⇒硬直的受信料、BS放送の付加料金は実質値上げ。
・問題点2⇒公共放送としての体制(大型娯楽番組への巨額な受信料充当に国民は疑問)。
・BBCの例⇒多チャンネル化に向け公共放送とは別の営利放送部門を設けた。
・廉価な制作手法や新しい放送手段の導入により、受信料一辺倒の経営体制を改めてほしい。

以上、読売新聞がNHK「新生プラン」擁護、朝日新聞が曖昧だが擁護寄り、毎日新聞が曖昧だが批判的、産経新聞、日経新聞が批判的と云う感じだろうか。
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<NHK問題の整理>
1.不払い問題~NHK内部の不祥事に端を発したものである。そもそも「公平負担」の問題ではない。
⇒不祥事防止についての解決策が十分か。第三者機関の設置等はどうなのか。
⇒不祥事前不払いについてはどうするのか。
⇒問題2が解決しない状況での督促は果たして正当か(支払い督促等のコストはどうするのか)。
2.公平負担問題~予算・決算の在り方、料金設定の在り方、公共放送の番組内容の在り方等の問題である。
⇒予算審議が機能しているのか(グループ企業への投資等は放送法上問題ではないのか等)。
⇒経営内容の開示が十分か(番組制作・購入コスト、間接経費、親子間取引実体等不明)。
⇒現在の受信料水準は妥当なのか(公共放送に必要な番組とは何か)。
3.体制の問題~公共放送と云う体制を維持するのかと云う問題である。
⇒公共放送の必要性はあるのか。
⇒民営化するとすれば、どのような体制が望ましいのか。
⇒少なくともグループ企業の存在は放送法上問題であり、これらをどうするのか。

私は、テレビが映らなくても困っていないが(ラジオで十分)、国会中継、緊急時等を考えると公共放送はあっても良いと思っている(くだらない娯楽番組等は不要だと思う)。しかし、現状の受信料徴収が妥当かどうかは誰も判断できないのではないだろうか。客観的な不祥事回避体制の確立、グループ企業も含めた予算及び決算の詳細な情報開示などを経た上で妥当な受信料が算定される等の措置がない限り、受信料支払い督促には極めて大きな疑問を感じるところである。

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