有線放送大手のUSENが昨年4月に始めた無料の動画ネット配信サービス「GyaO(ギャオ)」の視聴登録者が6月初めに1000万人に届きそうだ。「放送と通信の融合」にはテレビ局やIT企業も追随し、この4月には電通や民放キー局などが出資した新会社も設立された。だが、事業として採算を合わせるには課題も多い。放送に代わって将来の主役になるのか、話題先行なのか。評価は分かれる。
GyaOのサービス開始は、ライブドアとフジテレビの和解表明から1週間後の昨年4月25日。登録者数は今月21日で958万人となった。普及のスピードは、1000万人達成を今年12月と見込んでいたUSENの予想をも大きく上回る。
ブロードバンド(高速大容量通信)を使いパソコンで動画を見る。「シティーハンター」「ガラスの仮面」といったアニメ、映画、ドラマなどを無料で視聴できる。登録は、性別と生年月、郵便番号、メールアドレスを入力するだけで、20~40代を中心に男性が8割を占めるという。
坂本博康GyaO事業本部企画調整室長は「完全無料のパソコンテレビという位置づけが成功した。いち早く本格参入した先行者メリットもあった」と話す。
ただ、1000万人近くが頻繁に利用しているわけではない。登録抹消はなく、同じ人間が携帯電話、自宅と職場のパソコンで別々に登録すると3人分になるからだ。それでも、調査会社ネットレイティングスによると、4月には356万人が1度は視聴し、平均利用時間は1時間2分だった。
2月期中間決算では、番組制作費増加などのため、GyaO部門は10億円を超える赤字だった。広告収入は最初の1年間で推定30億円程度、民放キー局に比べ2けた少ない。
●キー局参入続々、有料では苦戦
ソフトバンクとヤフーが合弁で昨年末に設立したTVバンクは、5月から「Yahoo(ヤフー)!動画」を一新した。会員数は明らかにしていないが、中川具隆(ともたか)取締役は「ヤフーの利用者は1カ月に4000万人を超え、有料会員だけでも1000万人いる。この中からユーザーを掘り起こしたい」と話す。
民放キー局では、昨年7月の「フジテレビ On(オン) Demand(デマンド)」を皮切りに、これまでに全局が参入した。ただ、月間利用者は最多でも20万人に届かない。
最も本腰が入っている日本テレビの「第2日本テレビ」の会員は約25万人だが、「早期の100万人」という目標には届いていない。そこで有料配信中心だったのを、4月から無料配信を大幅に増やした。高田真治メディア戦略局長は「まず多くの人に見てもらうことが大切と考えた」と話す。
TBSの原田俊明執行役員は、フジテレビやテレビ朝日などと02~04年に取り組んだ有料配信の共同実験会社「トレソーラ」の社長をつとめた。「売れる番組は微々たるもの。半面、著作権処理などの手間や費用は膨大だ」と振り返る。 電通は、キー5局と他の広告会社3社に呼びかけ「プレゼントキャスト」を設立した。サッカーのワールドカップでは、ハイライト速報を配信する権利を得た。
情報セキュリティ大学院大学の林紘一郎副学長は「無料配信を本格展開すれば、広告収入を基盤とするテレビと視聴者を食い合う。ただ、その事態となるにはあと何年かはかかる」とみる。
Monday, May 22, 2006
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